高齢者における慢性心不全の影響

TusitaStudio / Pixabay

「心不全」本当に良く聞く病名です。

「心臓の病気だし、あんまり良くないのでは、治るのかな?心臓って身体の中心だし、心配…」
そんな印象を抱くと思います。

では実際にどの様な原因や症状があって、
どんな治療方法があるのでしょうか?
そして、予防法は?

高齢となれば心臓の機能も低下してしまいます。

それに加え、食事、睡眠、ストレス等、
日常生活が及ぼす影響は身体に表れやすいです。

日々様々な要因から、
心臓が影響をうけて心不全が発症し、
慢性心不全へと移行してしまう事があります。

ここでは心臓の働きから、
慢性心不全へと至るまでの経過、
そして日常の注意点まで、
解り易くご説明いたします。

 

 

 

1.心臓の働き

まずは基本的な、
心臓の働きからご説明してゆきます。

心臓は全身に血液を送り出す、
ポンプの役目をしております。

右心房、左心房、右心室、左心室の、
4つの部屋にわかれています。

左右の心房と心室の間には心房中隔という壁があり、
心房と心室の間は弁で仕切られています。

心臓の重さは、成人で約、
200g~300gで大体握りこぶし程の大きさです。

心臓のほとんどが「心筋」という、特殊な筋肉でできており、
とても強い力をもっています。

成人の場合、全身に流れる血液量は5ℓ程であり、
血管の長さをトータルすると10万キロです。

そこに毎日多量の血液を循環させているのです。

1日あたり6~10tの量を循環させており、
その事からも心筋の強さを感じ取れます。

この心筋の収縮によって、心臓のポンプ作用が起こり、
全身に血液を送り出します。

血液の循環は、図1.参照して下さい。

・まず左心室から送り出された血液が、全身をめぐって、右心房に戻ります。
・つぎに右心房から右心室へ入り、右心室の収縮で肺へ送られます。
・肺で酸素を取り込んみ浄化された血液は左心房に入り、それから左心室に入ります。
・そして左心室の収縮によって全身に送り出されます。

「血液を送り出し、血液を受け取る」という2つの働きですね。

図1.

 

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引用元:http://w01.tp1.jp/~a110115141/styled-167/styled-17…

健康な心臓は1分間に60回~80回程の、
規則的な収縮活動をくりかえしています。

心臓が規則的なポンプ活動を続けるためには、
心筋への十分な酸素と栄養素が必要となります。

その栄養や酸素を心筋へ運ぶのが、
心臓の表面をとりまく3本の冠状動脈となります。

図2.

 

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引用元:http://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0048/G0000525/…

冠状動脈は心臓を養う動脈です。

大動脈の付け根より、
左冠状動脈主幹部と右冠状動脈があり、
図2.を見ますと太い血管が左右に1本ずつ出ています。

さらに左冠状動脈主幹部から、
左回旋枝と左前下降枝の2本に分かれています。

冠状動脈の大きな流れは、
右冠状動脈、左回旋枝、左前下降枝の3本となっております。

その3本の血管が、
心臓自身を養うのに使われています。

そして心臓には電気信号を発生させ、
心筋を収縮するよう指令を出す、
電気システムが備わっています。

この電気信号が右心房の1ヵ所から、
一定間隔で発生しています。

それが、心臓全体に伝わることで、
規則的なポンプ活動を繰り返す事が出来るのです。

 

 

 

2.心不全とは

心臓の働きがなんとなくでも、
解って頂けましたでしょうか?

では、次に「心不全」について
ご説明してゆきます。

 

21心不全ってどんな状態?

簡単に説明すると、心臓に何らかの障害があって、
心臓本来働きが出来ない状態です。

ポンプ作用が低下して、
心臓が全身に必要なだけの血液を送り出せない、
症状、状態、結果を「心不全」と言います。

 ポンプ作用が低下してしまうので、
全身への栄養や、酸素を十分に送る事が出来ず、
様々な事が身体に起こってしまいます。

心疾患の中での死亡率では、
心不全がトップとなっております。

 

 

22左心不全

 少しおさらいをしますと、
心不全は、単一の疾患名ではなく状態であり、
心臓のさまざまな疾患が最終的に至る、
症状、状態、結果を表していると言えます。

【左心不全】
心臓は左と右に分かれています。
左右の心臓のどちらに問題があるかで、症状が変わってきます。

 左心不全は、左心室の収縮力低下と拡張不全にて引き起こされます。

 

・収縮機能不全とは
臓器に必要とされる血液を左心室から、
大動脈へと駆出(心臓が動き血液を送り出す事)する機能が収縮機能です。

収縮機能不全は心臓の筋肉や弁に障害が起きて、
収縮する機能が低下してしまい、
心臓から十分な血液を送り出すことが出来なくなります。

その結果、全身や肺に送られる血液量が少なくなり、
心室が広がってしまいます。

心室内に多量の血液が貯留して、
肺や静脈にも血液が貯留してします。

 

・拡張機能不全とは
拡張機能不全は心筋が硬くなってしまい、
収縮後に十分広がらなくなる状態で、
血液を取り込む機能が低下します。

(収縮機能不全が送り出す力が足りない)
(拡張機能不全が受け取る力が足りない)と考えて下さい

その結果、
左心房内や肺血管内に血液が貯留し、うっ血をきたします。

うっ血:静脈血の流出が妨げられて、血液が滞ってしまう状態。
血管という道路の交通渋滞のようなイメージです。

静脈:血液を心臓に戻す血管の道です

心不全はほぼ、うっ血を伴うものなのです。

「心不全」と言っても「うっ血性心不全」の、
同義語として使われることも実は多いので、
うっ血とはどの様な状態か、ご説明いたします。

肺で酸素を取り込んで浄化された血液は左心房に入り、
それから左心室に入り、全身へ送られます。

しかし、左心房や肺静脈(図1.)から左心室へ流れ込む血液が、
何らかの原因で上手く流れなくなります。

これを肺うっ血と呼びます。

肺うっ血が起こると取り込んだ酸素が、
肺から血液中に十分に送る事が出来なくなります。

血液中の酸素濃度が低くなっている為に、
呼吸困難がおこります。

軽度の場合、階段や坂道を登ったり、
少しの活動時に動悸、息切れ、息苦しさが出現します。

中度になると夜間、床につくと呼吸困難が出現します。

これは横になることによって日中は重力のために、
下半身に溜まっていた血液が急に心臓にもどり、
それにより、さらにうっ血が強くなってしまう為です。

横になると呼吸困難が出現する為、座位のほうが呼吸が楽な状態となり、
それを起坐呼吸(きざこきゅう)と呼びます。

そして重度になると、
安静にしていても、呼吸困難が続きます。

血液中の酸素濃度が低下いので、
くちびるや爪が紫色となります。

また、咳をすると、にピンク色の痰が出たり、
(これは血液が滞る事によって、肺の毛細血管内の圧が高まります。
すると行き場のない水分が、血管から押し出されてしまいます。
この時に血液成分も漏れてしまいピンク色の泡沫状の血痰が出ます)

呼吸をすると、喘息のように、「ゼーゼー」ヒューヒュー」
という音(湿性ラ音)が聞こえることがあります。

(これも血液が滞る事によって、
肺のうっ血→気管支のうっ血を起こしてしまいます。

さらに気管支の粘膜までも腫れを起こしてしまうので、
気道の閉塞が起こり、このような音が聞こえます)

起坐呼吸や喘鳴は肺うっ血の重い症状で、
これらの症状が現われた場合には肺に水が、溜まった状態です。

肺水腫(はいすいしゅ)と呼ばれており
急性左心不全の典型的な症状です。

 

 

23右心不全

 右心室のはたらきが低下しておこります。

右心房や全身から心臓へもどる静脈にうっ血がおこります。

右心房にうっ血が生じると、
肺動脈を介して肺へ静脈血を十分に押し出せないので、
右心室に至るまでの部位に血液が渋滞して溜まってしまいます
それによって、様々な症状が現れます。

右心不全の原因は80%以上が左心不全からなります。

つまり、左心室の拡張障害が原因で、うっ血が起こり、
「左心室→左心房→肺→肺動脈→右心室」と広がってゆくのです。

又、COPDなどの慢性肺疾患によるものもあります。

 

COPD(慢性閉塞性肺疾患):
同カテゴリー欄にて詳しくご説明しておりますので、に参考にして下さい。 

軽度の場合は、
体重増加や下肢に、むくみ、が見られる程度です。

中度になると、1日を通し下肢にむくみがみられるようになり、
おなかが張った感じや、肝臓が腫れる、食欲が出ない、
悪心、嘔吐、便秘等の症状が現れてきます。

重度になると、下肢のみでなく、
全身にむくみが出現してきます。

おなかに水が溜まるなどの症状も現れてきます。

体重も増加し、肝臓がさらに悪化してしまいます。

 

 

24心不全の原因

では、
どの様な原因があって心不全が起こるのでしょうか?

 

1虚血性心疾患=心臓に十分血液がいきわたっていない状態です。
冠状動脈の疾患があれば、心筋の収縮には酸素が必要である為、
酸素を含む血液の量が減少すると広範囲に心筋が損傷します。
また、冠動脈の閉塞により心筋の一部を破壊する場合もあります。
その結果、損傷した部分の心筋は正常に収縮できなくなり、
収縮機能不全を起こします。

2、心筋症=原因不明の心筋の病気です。
心筋の収縮力が落ち、左心室の壁が薄くなり、
中の容積が大きくなってしまいます。
心臓のポンプ機能が低下して、うっ血性心不全や、
不整脈といった病気を起こしやすいです。

3、弁膜症=心臓には4つの弁があり、心臓のポンプ機能を支えています。
弁膜症は、この弁の開閉がうまくいかない状態です。

図3.

3

引用元:https://medicalnote.jp/contents/150401-000001-LHWHVG

4、高血圧=高血圧では心臓に負荷がかかります。

その結果、心臓の壁は厚くなり硬くなります。

心臓が硬くなると十分な血液を速やかに取り込めず、
1回の収縮で送り出す血液量が少なってしまいます。

5、先天性心疾患=生まれつき心臓に疾患があり、
正常に心臓が働かない場合があります。

 

 

 

3.慢性心不全ってどんな病気?

ここでは慢性心不全について、ご説明いたします。

今までの説明も踏まえて参考にして下さい。

 

31急性と慢性の違いは(原因、症状)

慢性もあるなら勿論、急性もあります。

簡単に言うと、
それぞれ心不全の発症具合が急激(急性心不全)であるか、
または徐々に発生して持続的(慢性心不全)であるかによって、
急性か慢性かの分類をしています。

急性心不全は、
心臓のポンプ機能が急速に低下してしまいます。
全身の血液の流れがいきなり滞ってしまいます。

症状は心不全と同じく、
呼吸困難、口唇や皮膚が紫色になるチアノーゼ、血圧の低下等あります。

しかし、これらが急激に出現し、迅速に対処、治療をしないと、
生命の危険な状態になると考えられています。

原因として、
生活習慣の乱れ、過度のストレス、過度の運動、
心筋梗塞、狭心症、原因不明の場合もあります。

息苦しさやだるさが前兆として現れる事があります。

日常でも動悸、息切れ、手足のむくみ、血圧の低下、
起坐呼吸、等があり早期のうちに受信が必要です。

 慢性心不全は、
心不全同様に、心臓のポンプ機能が低下する為、
全身に十分な酸素が送れない状態です。

又、全身の血流が滞るために起こります。

原因も心不全と同様ですが、
特徴として、急性心不全に移行することを繰り返して、
徐々に進行していくことがあると言われています。

様々な心臓の障害から、徐々に心臓の機能が落ち込み、
必要とされる血液が全身に送れなくなります。

それによってうっ血等、心不全の症状が現れ、
日常の生活に影響を及ぼします。

加齢に伴って増加し、
生活習慣病の1つと数えられています。

症状、原因とも心不全と同様です。

 

 

32診断、治療

心不全の診断には、慢性、急性に関係なく、
収縮機能、拡張機能を検査する場合と、
合併症や、病気の経過等を見る様々な検査があります。

・問診、胸部のレントゲン、心臓のエコー、
心電図、血液検査、心臓のCTやMRI、
心臓のカテーテル検査等が、主にあります。

治療法として、
・血圧の調整、利尿効果やポンプ機能を強める等の内服薬の使用。
・供給出来ない分の酸素を使用して補助する。
・手術(ペースメーカー、人工心臓、心臓移植、人工弁)等。
・生活習慣全般の見直し(食事、睡眠、運動、ストレス)等。

 

 

 

33予防法

心不全になってしまうと、治療したからと言って、
すぐに改善される訳ではありません。

一生のお付き合いとなってしまう事もあります。

そうなってしまう前に、
予防出来るのであれば行いたい所です。

 

1、まずは日常の生活習慣

 生活習慣の見直しが基本中の基本となります。

寝不足ストレスは血圧等、様々な影響を及ぼします。疲れを溜めず、リズム良く生活する事が大切です。

・散歩等、適度な運動は心身共にリラックス出来て、心臓にも負担がかかりません。

又、肥満は心臓にとても負担をかけるので、
適度な運動は肥満に対しても効果を発揮します。

 

2、食生活の改善

 ・高血圧は心疾患の大敵です。(高血圧予防には塩分5~7g/日が良いとされております)
減塩食、大豆など植物性蛋白質の摂取、糖分は肥満の原因にもなります。

糖尿病も心不全を招くリスクです。

・水分の摂取
・ビタミン、ミネラル等のサプリメントの活用
・白砂糖や甘いジュース類、菓子類は、
避けるようにしましょう

 

3、タバコはダメ!アルコールもほどほどに

・タバコは心臓の血管を収縮させる作用がありますので、百害あって一利なしです。
・コーヒーにも血管収縮作用がありますので、飲みすぎには注意して下さい。

しかしコーヒーを1日に2~4杯程度飲んでいる人は、
全く飲まない人に比べて、心不全や脳血管障害にて、
死亡する確率が3~4割減ったとの報告もあります。

・アルコールは適量であれば血液の流れを良くする等、
効果もありますが、適量を超えてしまうと、
心臓に負担がかかり、心不全のリスクが増してしまいます。

 

 

 

4.高齢者における慢性心不全の影響

高齢者は全身の水分量が少なく、心不全になってしまうと、
身体の水分を適切に運ぶ事が出来なくなってしまいます。

「むくみ」はその特徴であり、
足を中心とするむくみが現れ、体重が増加します。

むくみは夕方強くなる傾向があり、
普段履いている靴がきつくなることで気づくことがあります。

高齢者はこの症状がとても出やすいです。

年齢を重ねるに連れて心臓のポンプ機能が低下する為、
発症率が高くなります。

又、注意点として、特に高齢者が心不全になると、
物忘れの症状が出ると言われています。

心不全になると脳の循環障害が起こり、
単なる物忘れだけではなく、認知症の様な症状や、
精神的に不安定な症状が現れる事もあります。 又、心不全の薬は副作用が多く、
身体のだるさや、立ちくらみ、喉の渇き等、様々な副作用があります。

高齢者にとってそれも苦痛を強めます。

やはり症状としては、
呼吸困難、咳、ピンク色の血痰、起坐呼吸、だるさ、
食欲不振、腹部膨満感等が起こります。

特に高齢者では上記の症状に気が付かなかったり、
見逃されてしまうので注意して観察して下さい。

最近では高齢者に限らず若者でも心不全を、
発症する方が増えています。 糖尿病や高血圧等、
10~20代の若さで見つかる事があります。

現代人の生活習慣病が大きな原因と言えるでしょう。
 

 

 

 

5.まとめ

以前にも増して、
高齢者の心不全がよく報告されています。

高齢者の場合は日常生活の中で、
症状がはっきりと現れない事、
自覚症状のない事が非常に多いです。

慢性的に息切れや物忘れ等があっても、
歳のせい」だと見過ごされてしまう事の方が多いです。

体調を崩した時や風を引いた時等に、
心不全の症状が現た時点で、
始めて気が付く事も多々あります。 

記載いたしました予防法も含めて、
観察し、関わって下さい。

 

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