「高齢者における慢性閉塞性肺疾患(COPD)」

 

肺の病気にも様々あります。

肺は身体に酸素を取り入れたり、出したり、
絶え間なく仕事をしています。

息を止めると、
とっても苦しいですよね。

そう、
生命に直結している「呼吸」において、
とても重要な役割をしています。

今回は肺の機能や構造等、肺の役割から、
肺疾患の一つである、慢性閉塞性肺疾患(COPD)について、
順を追ってご説明してゆきます。

 

 

1.肺の解剖と機能

では、COPDの説明前として、
簡単に肺の作りと機能について、
ご説明いたします。

図も参考にして、イメージして下さい。

 

1-1肺の解剖

肺は、二個一対となっており、
重さは、成人男性で約1Kgあります。

肺は左と右に分かれており身体の中でも、
大きな臓器となります。

肺は右肺が「上葉、中葉、下葉」に分かれており、
左肺が「上葉、下葉」という部位に分かれております。

左肺が上葉・下葉と2つしかないのは、
心臓の動きを邪魔しない為、と言われております。

左右の大きさにも違いがあり、
右肺の方がやや大きくなっております。

1

図.1 引用元:https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1893

肺の内部に入った気管支は、
どんどん枝分かれして細くなり、
最終的に末端の肺胞となります。

肺胞の周りには、
毛細血管が網の目のように取り巻いております。
成人では約3億個の肺胞があります。

2
図.2 引用元:http://www.zaitakusansoryoho.com/k02

気管支は肺の中で細気管支と呼ばれ、
木の枝のように肺に広がっています。

気管支の先にある肺胞は、
ブドウの実のようになっております。

以上が大まかな肺の解剖ですので、
図.1の咽頭や気管支等も含めて、イメージとして下さい。

 

1-2肺の機能

ではここから、
肺の働きについて説明してゆきます。

「肺」と思い浮かべると、酸素、二酸化炭素とか、
空気の入れ替えみたいな事かな、と考えてしまいがちです。

しかし、それだけではなく、
肺は血液循環に大きな役割を持っています。

まず、肺の役割として、
大きく分け「呼吸」と「血液循環」になっております。

肺は呼吸を行う事によって、酸素を体内に取り入れ、
二酸化炭素を体外に出しています。

呼吸をした空気の流れを大まかに言うと、
「口、鼻→咽頭→気道→気管支→肺→肺胞」となっております。

口から吸った空気から酸素を血液中に取り入れ、
二酸化炭素を体外に押し出します=「ガス交換

 

ガス交換=呼吸器官によって、体内に酸素を取り入れ、体内から二酸化炭素を出す事

1全身から集められた血液が心臓を介して肺に届きます。

2、肺で酸素を十分に含んだ血液に交換されて、心臓を介して再び全身へ送られます。

3心臓から送られてきた血液は、二酸化炭素を多く含んでおり、
肺は血液中の二酸化炭素を口や鼻から気体として体外へ排出します。
それと同時に血液へ新鮮な酸素を供給して心臓へと送ります。

さらに「ガス交換」を詳しく説明しますと、
口から入った酸素は肺胞まで流れます。

肺には肺動脈、肺静脈が出入りしております。

肺動脈は心臓の右心室から出て肺に向かって、
血液を流す血管です。

肺静脈は肺から出る血液を心臓にもどす血管です。

肺動脈と肺静脈は、血液の性状が違います。

心臓にもどる血管である「肺静脈」を流れるのは、
肺から酸素をもらった新鮮な血液です。

二酸化炭素を肺に送る前の、
汚れた血液が流れているのは、心臓から肺に入ってきている、
「肺動脈」という血管になります。

3
図.3 引用元:http://w01.tp1.jp/~a110115141/styled-167/styled-17… 

同カテゴリ-内にある
高齢者における慢性心不全の影響
「1.心臓の働き」を合わせて読んで頂くと「ガス交換」等、
さらに解り易くなっております。

肺の機能として、ガス交換だけではなく、
空気とともに運び込まれる有害な異物等からも、
身を守る働きがあります。

ついつい勘違いしてしまうのが、
実は肺そのものに、息を吸い込んだり、
吐いたりする力がありません。

肺の周りにある、横隔膜(図1)や、肋骨筋などの働きによって、
肺が膨らんだり、しぼんだりして、
空気の出入りを作り出しているのです。

腹筋なども含め、周りの筋肉が働いて、
呼吸をしているのです。

以上が肺の基本的な働きです。

 

 

 

2.慢性閉塞性肺疾患ってどんな病気?

人間の体にとって有害な粒子やガスを、
長期間吸い込んでしまうことで、
肺に炎症が生じて起きてしまいます。

それによって、
呼吸が上手く出来なくなる等の症状が現れます。

それを慢性閉塞性肺疾患(COPD)と言います。

慢性気管支炎肺気腫等、慢性的に気道が閉塞し、
肺へ流れる空気の量が低下してしまう病気の総称をいいます。

慢性気管支炎=気管や気管支が慢性的に炎症を起こし、
咳や痰が続く状態で、原因は不明です。
息が吐き出しずらい症状です。

肺気腫=肺の空気容量が増加して、
肺が膨らんだまま、縮まらない状態を言います。

症状も慢性気管支炎と類似しております。

WHO(世界保健機関)では、
1990年に全世界の死亡原因の第6位だったCOPDですが、
2005年には世界中で年間300万人が命を落としたとされ、
死亡原因の第4位に上昇しました。

COPDによる死者は、
今後10年間でさらに増加すると予測されており、
2020年には死亡原因の第3位になると推定されています。

 

 

2-1原因、症状

・原因

主な原因として喫煙者の15~20%にCOPDが発症し、
COPD患者の90%は喫煙歴があります。

実際の医療現場においても、
喫煙者にCOPDの患者さんはかなり多かった印象がありますね。

やはり、タバコによる影響が圧倒的であり、
ニコチン、タール、等によって、気管支に炎症が起きてしまったり、
肺胞が破壊されてしまいます。

炎症や破壊によって、酸素の取り込みや、
二酸化炭素を出す働きが悪くなり、
さらに重症化されやすいです。

タバコを吸う本数や、喫煙を始めた年齢が若い程、
COPDになりやすい傾向です。

又、遺伝的要素や、
大気汚染も原因の一つです。

 

・症状

最初は日常のありふれた症状の事が多いです。

・ちょっとした散歩、階段や坂道等の上り下等、活動時による息切れ。

・特に風邪をひいている訳でもないのに、咳や痰が止まらない。
風邪を惹きやすく、風邪をひいたら治りにくい。

・徐々に進行し、歯磨きや着衣の動作等、少し動いただけでも息切れをします。
軽度の活動でも日常生活に影響が表れ始めます。
痰の状態も量が増えて、膿性となってきます。
安静時には、息切れ等の症状が、通常見られないのが特徴です。

・肺だけでなく徐々に全身へと影響してしまい、
食欲不振、体重減少、筋力の低下、呼吸不全心不全からの身体のむくみ等、
様々な症状や疾患を起こしてしまいまいます。

命に関わってくる病気です。

 

2-2検査、診断

・問診を行います。
COPDの症状があり、かつ喫煙歴などの因子があるか、
中高年者であるか等を聞いてゆきます。

・スパイロメーター、という機械を使って、
呼吸機能検査を行います。

この検査はCOPDを診断する上で欠かせない検査であり、
肺活量、息を吐いたときの空気の流れを調べます。
(COPDは息が吐きだしにくいのが特徴です)

4

図.4 引用元:http://www.xendela.info/2013/03/blog-post_14.html

さらに、X線検査、心電図検査、
行動時の呼吸状態、運動能力の低下、合併症、
他に気流閉塞を起こす疾患を除外して判断する等、
総合的に検査を行い診断します。

23治療

まず、お伝えする事として、
現在の医療でCOPDを根治する治療法はありません。

出来るだけ早い段階での治療が、
最も望ましいと言えます。

 

 

・禁煙

禁煙は治療の大きな第一歩となります。

タバコを吸い続け限り進行は止まりません。

病院の禁煙外来等を利用する等して、
とにかくタバコを止める事から始めましょう。

 

・薬物療法

薬物療法も様々あり、喀痰を調整する薬、感染症を防ぐ抗生物質等、
痰の排泄を緩やかにして呼吸を楽にしたり、
気管支拡張薬によって炎症を起こしている気管支を拡げ、息切れの症状を和らげます。

気管支拡張効果で錠剤や貼り薬等も、
直接口にスプレーする吸入薬も効果があります。

気管支の炎症を抑えるステロイド薬等、
必要に応じて用いられます。

いずれも呼吸を補助してくれる効果があります。

 

・呼吸リハビリテーション等

残された肺の機能を生かし、また維持する為、
トレーニングを行ないます。 口すぼめ呼吸もその一つです。(図5)

また適度な運動も、呼吸器系の筋肉を鍛えられるので、
ゆっくりと歩いたり、適度な運動もリハビリの一環となります。

専門の指導を仰ぎ適切に行う事が大切です。

8

図.5 引用元:http://www.xendela.info/2013/03/blog-post_14.html

 

 

・体力維持の為、生活管理

バランスの良い食事、運動、睡眠は必須です。

日常生活を整える事で精神的な面でも、
様々な効果が期待できます。

 

・酸素療法

COPDの進行によっては、
体内への酸素供給が難しくなります。

低酸素の状態になり、
身体に大きな負担がかかります。

このような状態に行なわれるのが酸素療法です。

症状によっては自宅での酸素療法が可能ですし、
訪問看護を利用したり、通院のみでの患者さんも、多くおります。

携帯用のボンベを使用して、
温泉や旅行に出かけている方も沢山おります。

 

・外科的な治療

今までご説明した内科的治療を行っても、症状の改善しない場合に、
外科的な治療が、行われることもあります。

COPDによって膨張した肺の一部を切除し
呼吸時の負担を軽くする目的で行なわれます。

しかし、数年の効果は見られますが、
いずれは元の状態に戻ってしまいます。

根本的な治療にはなりません。

 

3.慢性閉塞性肺疾患の予防法

COPDは別名「タバコ病」と呼ばれている程です。

その事からも、
COPDの予防法はタバコを吸わないこと」の一言に尽きます。

COPDの治療法も、タバコを吸わないことでした。

色々な治療法も説明いたしましたが、
その効果はタバコを止めることによって、
得られる効果には到底及びません。

大気汚染や有害な煙を出す暖房器具等が、
原因となる事もあります。

しかし、先進国においてこれらの問題はほとんどなく、
原因はタバコです。

実際に約9割は喫煙者か過去に喫煙者である事からも、
最善の予防策は「タバコを吸わない事」です。

禁煙する方法として、
1、(依存性が軽度~中度の方で)
・喫煙する自信のある方
・時間的に医療機関を受診できない方では

薬局等でニコチンパッチや、
ニコチンガムを購入し使用してみて下さい。

本等の活用、私のおすすめ→「禁煙セラピー」
「禁煙セラピー」は私の周囲の喫煙者も、
この本を読んで禁煙に成功した方々が、多数おります。

ちなみに皆、医療者でした。
(指導しなければならない医療者の喫煙率は高いですね...)

 

2、(依存性が重度の方で)
・禁煙する自信がない人
・過去に禁煙して禁断症状が強かった人では医療機関で禁煙治療を受ける

「禁煙セラピー」の本を読んでみる等、
試してみて下さい。

 

 

4.高齢者における慢性閉塞性肺疾患の影響

今までCOPDについて、ご説明してきましたが、
ここでは高齢者がCOPDにどの様な影響を受けるのか、
お伝えしてゆきます。

高齢者も息切れや、疲労感等、
同様の症状が見られます。

COPDは通常、40歳以上の成人に診断されますが、
60歳以降に症状が強くなり診断される事が多いです。

COPDは咳や痰等の症状も長く続き、息切れもあります。

特に高齢者では体力が衰えているので、
肉体的、精神的な苦痛は大きいです。

さらに弱っている身体から、
新たな疾患を引き起こしてしまう可能性も高いです。

そして、60 歳以上である高齢者の、
喘息死の割合も増加しております。

これは、高齢者の喘息に、
COPD を合併している事も言えます。

アメリカの研究では、
COPDによって認知症になりやすいという論文もあります。

しかし高齢者では、
「息切れなんて 歳のせい だから」とかなりの確率で、
見過ごされてしまう事もあります。

症状を軽視せず、
早めの受信を心掛ける事が大切です。

 

 

 

 

5.まとめ

COPDについて、
大体のイメージをもって頂けたと思います。

高齢者は自覚症状の乏しい事が多く、
息切れや、疲労感があっても、
軽度であれば、少し休むと治まってしまう、
そんな特徴もあり、COPDは発見しずらい病気と言えます。

重複いたしますが、タバコを辞め、
喫煙歴があれば、症状が軽度であっても、
一度検査する事をお勧めいたします。

 

 

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

CAPTCHA