認知症における蒐集癖・人集め

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認知症「異食、蒐集癖、人集め」
と聞いて、どのような事を想像しますか?

「ただ単に、食べ物との区別がつかないから、
何でも口に入れちゃうんでしょ、
さっき食べた事もすぐに忘れちゃうし・・・。

何でも良いから手に取って、自分の物にしちゃう、
それを色んな所に隠してしまうのよね、
意味も解らずに、ただ取っているだけでしょ?

誰でも良いから人を見るとすぐに呼ぶし、
ちょっとも我慢が出来ないし、
自分で出来る事すら沢山頼んでくるんだから・・・、
訴えが多い分、依存心も強いんじゃないかな」

といった返答が多く返ってきました。

そしてその返答も、決して間違ってはいない、
と、感じると同時に表面的な部分しか、
見えてない気がしました。

認知症の方を抱えた現場(自宅や施設、病院等)
忙しさのあまり深く考えている、
時間も余裕もないかもしれません。

ここでは「蒐集癖、人集め」
に対して、対象がどの様な心理や原因で、
その行動を起こしてしまっているのか?

また、それに対しての対処方を出来る限り、
ご説明してゆきます。

何かの手がかりになれば幸いです

 

 

 

 

 

1.蒐集癖(しゅうしゅうへき)とは

「蒐集」と聞いて、ん?
と思われる方もいるかもしれません。

「蒐集」と「収集」には違いはありません。

1.蒐集=趣味、研究、保管、切手の蒐集
保管を目的として集める事。

2.収集=取り集める、情報を収集する、可燃ごみの収集日
ひとまとめにして、集める事。

として分けて説明している場合もありますが、
蒐集も収集も1.2両方の同じ意味を含んでいます。

しかし、この漢字(蒐集)は、
現在では、コレクションといったイメージが強い為、
ここでは「蒐集」を使用しております。

参考として、
*「同音の漢字による書きかえ」
(昭和31.7.5・第2回国語審議会総会)
「当用漢字の使用を円滑にするため、
当用漢字表以外の漢字を含んで、
構成されている漢語を処理する方法の一つとして、
表中同音の別の漢字に書きかえることが考えられる。
ここには、その書きかえが妥当であると認め、
広く社会に用いられることを希望するものを示した」
とあります。

遺蹟→遺跡
愛慾→愛欲 といった様に、
蒐集癖→収集癖 としております。

この「蒐集」に「癖」をつける事で「蒐集癖」となり、

・むやみにものを集めたがる癖。
・収集を趣味とする。

といった意味になります。

趣味で様々な物を集めている人って多いですよね、
しかし、度を越してしまうと周囲にも迷惑をかけてしまう事、
ありますよね。

人間の狩猟本能で、蒐集してしまう、
という説もありますが、ゴミ屋敷のように、
かなり強い執着を示してしまう場合もあります。

シアトル市の例では、
二十五年間もガラクタやゴミを家に蓄積し、
天井まで埋め尽くしたゴミの量は、
収集車七台分もあったようです。

そこの住人は高齢者でしたが、
精神科医は「ゴミ収集癖」という、
一種の強迫的な、精神症状であると分析しています。

1-1.認知症における蒐集癖とは

認知症には大きく分けて中核症状周辺症状
分かれております。

中核症状=記憶障害、見当識障害、失認、失行、
判断能力の低下、言語障害、等

周辺症状=せん妄、抑うつ、興奮、徘徊、
睡眠障害、妄想等
その周辺症状の一つとして、
蒐集癖があるといわれておりますが、
実はそれだけでありません。

 

 

1-2.なぜ蒐集をするの?

勿論、単純に「その物に惹かれてしまった」
「何かに使えそう」「懐かしい」「キープしておこう」
また、「置いた場所を忘れてしまったのでまた集めに行く」
「置いた事すら忘れてしまった」
等の原因もあります。

しかし、
寂しい気持ち、をきっかけとして、
蒐集をしてしまう事が多いのです。

本人自身が寂しい、といった気持ちに気が付いていなくとも、
深い心理的な部分で寂しさを感じ、集めてしまう事もあります。
本人も見えない心の叫びの様ですね・・・。

・年齢的に妻を失った悲しみ、家族を失った悲しみ
・なかなか家族に会えない寂しさ
・故郷から遠く離れてしまったり、故郷を思い出したり
・家に帰りたい寂しさ、悲しさ
・今いる自分の場所、時間も把握できず、
とにかく不安になってしまう、寂しくなってしまう、
といった事が多く、
孤独感や喪失感の現れ、とも言えます。

集めてしまう物に関しては、
なんでもかんでも持ってきてしまう、
と言った訳ではなく、トイレットぺーパー、ティッシュ、新聞、
といった「日常に良く使うもの、使ってきたもの」が多いです。

中には、TVのリモコンに執着してしまったり、
他者の部屋に置いてある、病衣やタオルを、
自ら着る事は無いのにひたすら集め続ける方もおりました。

部屋に集めるだけでなく、自らの服の中にしまったり、
他人の布団に隠しておく方もおりました。

しかし、ゴミや不衛生な物、猫や生き物を、
拾ってきてしまう、そんな方もいます。

蒐集してしまう方に、
悲しみや、寂しさはあったとしても、
その様な行動は、家族や介護者として、
実際どうしたら良いのか、迷いますし、困ります。

 

 

1-3.蒐集癖の対処法

ではどの様に対処すれば良いのでしょうか?

1.寂しさの軽減

不安、寂しさ、孤独感、を出来るだけ、
感じさせない、軽減出来るように援助します。

上記でもご説明した様に、認知症の方々は、
寂しさや不安を感じている事が多いです。

・一人の時間を少なくして、沢山声をかけてあげる。

・出来る範囲でレクや散歩等一緒に行う。
外への散歩はかなり気分転換となります。

・蒐集から別の事に意識出来る様に、
何かの作業を行ってもらう(タオルたたみ、折り紙)

・言葉をかけなくとも、肩もみやマッサージ等、
身体に触れる事で、安心感や互いの信頼感を得る。

常に抑制されている方がおり、
状況を見てトイレに付き添う等しましたが、
必ず、トイレットペーパ-を持ってゆこうとしたり、
紙を小さく何枚にもちぎって、ポケットに入れる行動がありました。

しかし、徐々に抑制も外し、レクへの参加や、
人との関わりが増やす事によって、
1人でトイレへ行っても、全く蒐集する事がなくなりました。

・歌う事、踊る事、笑う事、楽しい事、
本人の好きな事が出来れば効果が得られますし、
もし蒐集している所を発見しても、
心が軽くなってゆけば、すんなり返却してくれる事もあります。

 

2.ある程度は許容する

ある方は、集めた物を必ずと言って良い程、
同じ引き出しにしまっておりました。

今までは、すぐにこちらで片付けていましたが、
あえて片付けず、様子をみていた所、
その引き出しがいっぱいになった所で、
蒐集癖が治まったケースもあります。

衛生的に置いていても腐らないものや、
危険のないと思われるものは、
ある程度本人に任せてみるのも一つの対策です。

逆にこちらの方で、テッシュ等を余分に用意する事で、
治まる事もあります。

 

3.環境の調整

施設によっては、トイレットペーパー等、
蒐集されそうな物は、手の届かない所へ置いたり、
蒐集されるのはしょうがないとして、
最低限しか置かない場所もあります。

部屋に紙1枚すらない所もありますね。

さらには、
タンスを開かない様にしてしまう場所もありました。

しかし、余計にストレスがかかり、
蒐集癖が過剰となった事もあります。

又、タンスの開いているスペースに蒐集してきた物を、
入れる方がおりました。
タンスや衣装ケース等、色々なスペースにしまう為、
集めたものを探すのが大変でした。
その為、そのスペースに、衣類を入れて隙間をなくし、
空箱をタンスの横に置いて置く事で、
空箱に蒐集してきた物を置くようになりました。
何を蒐集したかの確認も、すぐに出来るようになったため、
安全面でも効果がありました。

環境と言っても様々であり、
対象の方が家に住んでいた時の物を、
持ってきて飾ったり、自宅で使用していた、
椅子を使用する事等で、落ち着かれる事もあります。

病院では難しいかもしれませんが、
施設等では相談し、出来る範囲で調整してあげて下さい。

 

 

 

2.人集め(ひとあつめ)とは

ここからは「人集め」
についてご説明してゆきます。

引用:大辞林 第三版
・人を集めること。
・労働力を集めたり、
催し物の参加者を集めたりすることをいう。

引用:goo辞書
・興味、関心などを引きつける。
・集中させる。
「注目を―・める」「人望を―・める」「全神経を―・める」

と書かれております。

特に問題とするような印象は受けませんよね。

では、「認知症における人集め」とは、
どういった事を示すのでしょうか?

2-1.認知症における人集めとは

異食や蒐集癖と同様に、認知症には大きく分けて、
中核症状周辺症状があります。

その周辺症状の一つと考えられております。

人集めも原因がこれだけではありません。

介護の現場等では「おーい、ちょっと~」
と常に誰かを呼んでいる声や、
しきりに手をパンパンと叩いて、
注意を引いたり、ここには居ない家族を、
探し、呼んでいる行動が目に入ります。

勿論、寒い、熱い、トイレ、喉が渇いた、
等、具体的な要望があり呼んでいる事もあります。

しかし、ここにも「寂しさ、孤独、不安」
が大きく関わっているのです。

 

 

2-2.なぜ人集めをするの?

そうです。

異食や蒐集癖と同じ感情ですね、
自ら感じていたり、感じていなくとも、
深い部分で感じている「寂しさ」からの行動です。

・家族を失った悲しみ、家族に会えない寂しさ
故郷の思い出、家に帰りたい、

・今いる自分の場所、時間も把握できず、
とにかく不安になってしまう。

蒐集癖でもご説明した事と同様で、
孤独感や喪失感の現れと言えます。

 

 

2-3.人集めの対処法

対処法としては、蒐集癖での対処法
1.寂しさの軽減と同様であり、
さらに、
以前に私が実践した方法として、
ユマニチュードといった手法があります。

ユマニチュード
フランス生まれの新しい認知症ケアの手法で、
「見る」「話しかける」「触れる」「立つ」
の4つの基本柱で接する手法です。

1.「見る」
同じ目線の高さ、20cmほどの近距離で、親しみをこめた視線を送ります。

介護者がしゃがむ等して、まずは目線の高さを合わせます。
そして、視線を合わせる事が大切です。

私は最初20cmではなく、距離感は徐々に詰めていきました。

 

2.「話しかける」
返答の無い方であっても、ゆっくりと話しかける。

今、行っている介助を、実況するように、
ゆっくりと声をかける事が、大切です。

 

3.「触れる」
ユマニチュードでも、触れることを推奨しています。

背中や肩、手のひら等、
人と人の触れ合いは理屈を超えて通じる感覚ですね。

 

4. 「立つ」
「自分の足で立つことで人の尊厳を自覚する」

立つ事で、筋力向上だけでなく「自分は人間なのだ」
といった自覚が生まれます。

立てる方には行ってみて下さい。

ユマニチュードの注意点として、
・腕などを突然「つかむ」
・視界に入りにくい「横や後ろ」から声をかける
・無理やりに立たせようとする
は避けて下さい。

引用元:
「暴言が消えた!魔法みたいな認知症ケア「ユマニチュード」って?

異食や蒐集癖のある方にも、
ユマニチュードで関わってみて下さい。

私も実際に行い、さらに実践中です。

普段、易怒性の強い患者さんでも、
刺激せずに、接する事ができました。

寂しい気持ちの患者さんにも、効果があり、
いつもと違う笑顔をみせてくれる等、
明らかな効果を実感できました。

ユマニチュードを実践することで、
認知症患者本人の心は和らぎ、
寂しいといった感覚、感情も徐々に薄れてゆくのでは
ないかと感じました。

そして、新たな信頼関係が生まれる事もあり、
この手法は介護者の為のもの、でもあると言えます。

しかし、基本はあくまでも、1人1人の介護者が、
本当に優しさや、相手を思って関わる事には
どんな手法も敵わないですよね。

 

 

 

3.まとめ(異食、収集癖、人集め)

もうお分かりでしょが、
認知症における「異食・蒐集癖・人集め」
に共通する3つの事は周辺症状だけでなく、
「寂しさ、孤独感、不安感」です。

異食は「身体の中に、もの、を詰め込むことで寂しさを埋めたい」

蒐集癖は「もの、を集めることで寂しさを埋めたい」

人集めは「人を集めることで、寂しさを埋めたい」

そういった気持ちが含まれている事を、
忘れないでください。

この感覚が感情が、
ある程度満たされていれば、埋まっていれば、
たとえ周辺症状があったとしても、
「異食・蒐集癖・人集め」といった、
行動はかなり少なくなるでしょう。

どこかで読んだ言葉に、

「歳をとると子供に戻る、

不安や恐れから解放する為に。

認知症も不安や恐れを忘れる為に。」

って言葉をなんとなく思い出していました。

しかし、認知症でも寂しさや、不安は沢山ありますよね。
見えない、本人すらあまり感じない部分でも。

よろしければ同カテゴリー内の、
「認知症における異食行為」
も合わせて読んで頂けると参考となります。

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