認知症における異食行為

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認知症の方で「異食、収集癖、人集め」
といった行動をとってしまう場合があります。

なぜ、この様な行動をしてしまうのでしょうか?

この3つの行動の中には、
ある、共通する気持ちがあります。

まず1つ目として「異食」について、
ここでお話しいたします。

認知症「異食、収集(蒐集)癖、人集め」
と聞いて、どのような事を想像しますか?

「ただ単に、食べ物との区別がつかないから、
何でも口に入れちゃうんでしょ、さっき食べた事もすぐに忘れちゃうし・・・。

何でも良いから手に取って、自分の物にしちゃう、
それを色んな所に隠してしまうのよね、意味も解らずに、ただ取っているだけでしょ?

誰でも良いから人を見るとすぐに呼ぶし、ちょっとも我慢が出来ないし、
自分で出来る事すら沢山頼んでくるんだから・・・、
訴えが多い分、依存心も強いんじゃないかな」

といった返答が多く返ってきました。

そしてその返答も、決して間違ってはいない、
と、感じると同時に表面的な部分しか見えてない気がしました。

認知症の方を抱えた現場(自宅や施設、病院等)
忙しさのあまり深く考えている、
時間も余裕もないかもしれません。

ここでは、「異食、収集癖、人集め」
に対して、対象がどの様な心理や原因で、
その行動を起こしてしまっているのか?

また、それに対しての対処方を出来る限り、
ご説明してゆきます。

何かの手がかりになれば幸いです。

ここではまず「異食」についてご説明してゆきます。

 

目次
1異食とは
2異食症って?
3なぜ異食をするの?(4つの原因)
 3-1異食の対処法
 3-2具体策
 3-3予防策
4まとめ

 

1.異食とは

一言でいえば、
食べ物ではないものを食べてしまう事です。

食べ物ではない物を口に入れる行為、
これを異食といいます。

普通であれば食べ物でないものを 口に入れれば、
吐き出しますが、飲み込めるものであれば、
飲み込んでしまう、食べてしまいます。

紙、新聞紙、ティッシュ、ゴミ、花、オムツ、
石鹸、タバコ、消しゴム、便、タオル、ビニール袋等、
目についた物は口に入れてしまいます。

車椅子の座布団を破って、中の綿を食べたり、
失禁したオムツを破って食べる等の行動も、
何度か目にしました。

 

 

 

 

2.異食症って?

今回は認知症における「異食」
についてのご説明がメインですが、

・妊娠中の女性や小児
・統合失調症などの精神疾患
の方にも発症します。

妊娠中の女性や小児に最もよく発生します。


・妊娠中の女性による異食症は、

鉄や亜鉛などの栄養不足が、
大きな原因と言われております。

妊娠することによって女性の身体は、
自分自身ではなく赤ちゃんに優先し、
栄養や酸素を供給するよう働き始めます。

不足した栄養を摂取したくなり、
その欲求が異食という行動を起こしてしまいます。

貧血(鉄欠乏症)は、
妊婦の異食症の根本的原因であると言われております。
 

・小児による異食症は、

保護者のネグレクト(無視、怠る、ないがしろにする)等により、
そのストレスや空腹感から異食してしまうと考えられます。

子供はストレスをため込みやすい性格であり、
その発散方法として異食行動を行ってしまうといった原因があります。

・統合失調症等、精神疾患による異食症

ストレス等も大きく関係していますが、
統合失調症の患者であれば、
幻覚や妄想が原因で、異食が見られることがあります。

実際になぜ異食をしたのか?と尋ねると、
「食べろ、口に入れろと聞こえた、命令されて、
逆らえなかった」等と言われることがあります。

治療として、
心理療法、薬物療法、バランスの取れた栄養の摂取、
亜鉛、鉄、マルチビタミン等のサプリメントでの補給等があります。

 

 

 

 

3.なぜ異食をするの?(4つの原因)

では何故、普通であれば食物とされていない物を口に入れ、
そして食べてしまうのでしょうか?

ここからは、「認知症における異食」
をベースとして、ご説明してゆきます。

  

1.見当識障害失認よる原因が主に挙げられます。

この原因が異食行動のベースとなっております。

見当識障害=日時、場所の理解や方向感覚などが失われ、
自分が置かれている状況を判断する事が出来ない状態です。

今居る場所が分からない、日付や時間が分からない、
知っているはずの人を見ても、誰だったか思い出せない等の症状があります。

そして、目の前にある物が食べられる物かどうかも、
分からなくなってしまう、そんな状態になる事があります。

見当識障害の原因として、
脳血管障害、アルツハイマー病、統合失調症、
交通事故、薬剤の副作用、頭部外傷、脳炎、
睡眠障害等が原因となっております。

失認=視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚(体の器官で目・耳・鼻・舌・皮膚)
等、色、音、形の感覚に異常はないのに、
物を認識出来なくなる症状です。

それによって、何でも口に入れてしまったり、
なんの躊躇もなく危険な物に触れてしまう事もあります。

目の前の物が何か分からないのです。

原因として脳腫瘍や脳血管障害等があります。
 

2.空腹(お腹が空いている)

見当識障害や失認で、例え食べた事を忘れていても、
なんとなくお腹が満たされていれば、
異食を行う可能性は低くなります。

勿論、満腹中枢が機能しなくなっている状態であれば、
空腹に関係なく異食が見られますが、
しかし単純にお腹が空いていれば異食する確率も増してしまいます。

実際に食前に異食が多いといった報告もあります。
 

3.寂しさ、不安感、ストレス

認知症の方でも、ストレスが溜まってゆくと、
食べる事でその「不安」「寂しさ」のストレスを解消しようとします。

自ら上手く表現できないイライラ感、
家族に会えない寂しさ、自分がどこにいてどうなってゆくのか?

沢山の事を忘れていっている、進行系の恐怖感。

入院先や自宅、施設、認知症の進行状況等、
個々や状況によって様々なストレスを抱えております。

それによる原因によっても、異食をおこしてしまいます。

そして、そのストレスの中でも、
「寂しさ」にも大きな要因があります。

異食は寂しさなどのストレスが大きく関係し、
起こると言われています。

「寂しさ」=「異食」は深いつながりがあります。

子供が寂しいと指しゃぶりをするように、
人によってはストレス発散で、

甘い物を沢山食べてしまう事もありますよね。

寂しい気持ちを感じているとき、
実は「口」や「食」に関することに、
繋がってくることが多いのです。

異食、その行為によって安心感を感じるのです。


4
.味覚障害

脳血管障害、アルツハイマー病等では、
脳内の神経が多く失われることが解っております。

脳の味覚を感じる部分が影響を受け、
それに加え、年齢や疾患で視覚も衰えているため
食べ物と間違って口に入れても、甘味、塩辛味、
酸味、苦味を感じづらくなっています。

その為に異食をしてしまう場合もあります。

 

3-1.異食の対処法

脳の機能はリハビリによって、
ある程度の改善はあるかもしれません。

しかし、なかなかリハビリ等で機能改善を期待し、
異食行為を減らす事は難しいと思われます。

そこは、判断力の低下により、
食べるものかどうかの区別がつかない状態であると割り切る事も大切です。

異食を起こしてしまうたびに、
「食べ物ではありませんよ」
「先程お食事を食べたばかりですよ」と注意したところで、
認知症における異食が止まることはありません。

ですので、
出来る限りの対処法が必要となってきます。

 

3-2.具体策

1.食事を小分けにする。

ご説明した様に、異食がある方の中には、
脳細胞のダメージによって満腹中枢が正常に働かず、
常に空腹感を訴える人がおります。

そういった方の中には、目を離した隙に、
吐くまで物を食べ続けてしまった。

家でチョコレートを食べ続けて、最後には血を吐いてしまい、
入院されてくる等の例もありました。

いくら食事を食べても満腹になる事は無く、
食べ物が胃に収まり切れず、吐きだしてしまうのです。

満腹を感じないのであれば、
一回の食事量を少なくして、回数を増やします。

口の中に食べ物が入っている時間を長くする事で、
満足感を感じている時間が増えます。

例えば、通常「朝、昼、夕」3回の食事を、
「朝、昼前、昼、夕前、夕」といった具合に、
食事の回数を増やすのです。

おやつの時間を一日に2回にする等の方法もあります。

カロリーを摂取しすぎない為に、
1回分の食事を数回分に分けてみれば、
食事回数が増えても問題ありません。

 

2.歯磨きの習慣をつける

 脳血管障害や認知症になってしまい、
自分で、歯磨きや入れ歯の手入れが出来なくなってしまったという事があります。

食後に介助をしてでも、
歯磨きや、入れ歯を洗う等の習慣をつけておくと、
「食事が終了した」という感覚がインプットされます。

それによって、
「さっき食べた」という感覚が残る場合もあります。

 

3.原因となっているストレスの軽減

 脳血管障害や認知症の方等、「寂しさ」や「イライラ感」
自分でも、どうしてよいか解らない、
といった多くのストレスを感じています。

その不安やイライラの原因を少しでも取り除く事が大切です。

一人でいるのが寂しいのであれば、
空いた少しの時間であっても、一緒に過ごしたり、
声をかける、肩をさすってあげる等の時間を、
出来るだけ増やすようにして下さい。

一緒に何か出来るレベルの方であれば、
タオルを畳んだり、お茶をのんだり、散歩をしたり、
お話しを聞いてあげたり、「常に見ていますよ」
といった事を感じてくれればまた変化があります。

人と繋がっている感覚が増えて、
寂しさやイライラが軽減され、
徐々に異食が無くなっていった方もおります。

ここ最近の例では、常に布団の襟をかじったり、
服の袖口をかじっている方がおりました。

職員が、なんとなく両腕にレッグウォーマーを使用しただけで、
かじっている行為が軽減した例もあります。

何らかの安心感につながったと考えられます。

実際には寂しさや、イライラ等の原因が、
はっきりとわからない場合がほとんどです。

説明で重なる部分はありますが、
笑顔で接し、相手を思って話しかける。

それだけで不安や不満が軽減する可能性があります。

一見人と接する事が嫌いに見える方でも、
長く一人にしてしまうことで、症状が出てしまう事があります。

たまには声をかけてあげて下さい、
相手もたまには声を掛けられる事を待っています。


3-
3.予防策

色々な方法を試したけど、
なかなか改善は難しい、といった場合もあります。

その対応策として、

1.異食の原因となる物を、手の届かない位置に置く

一番異食が多く見られるのは、自らの部屋にいる時です。

常に介助者の目が届くわけではないので、
そこで何かを口に入れてしまう事がありますし、
食堂等、皆が集まる場所と比べ発見が遅くなってしまいます。

そして、夜間においても同じ事が言えます。

単純な対策として、物品を置かないという方法もあります。

手に届く場所、目に触れる場所に危険な物を置かない。

しかし、この方法を過剰にとってしまっている施設を、
見た事がりますが、部屋が不自然なほどに何もありません。

ちょっと口を拭いてあげたい、鼻水が出ている、等の場合、
ティッシュ1枚すらない状況であり、全室ほぼその状態で、
統一されているといった所もあります。

違ったストレスを与えかねないとも言えます。

その分関わる時間を増やしたり、出来る範囲で、
レク等に誘導する等の工夫が必要となってきます。

又、手の届かない位置に、
何かを飾るといった方法もあります。

 

2.ケアマネージャーに対相談する

自宅では尚更難しい状況となってきます。

家族が仕事などで見守りが出来ず、
対象が日中1人になる時間がある場合、
デイサービスショートステイの利用もあります。

地域の相談室やケアマネージャーに相談し、
対応を考えてゆく必要があります。

1人で考えず相談しましょう。

 デイサービス=通所介護生活のケアが中心となり、
食事や入浴、レクリエーション等の、
サービスを受けることができます。

 ショートステイ=数日間、専門施設に介護をお任せするサービスです。

施設に短期間入所して、日常生活の世話やレクリエーション、
リハビリなどを受けられます。

在宅介護中の冠婚葬祭や旅行の時等、
介護者の介護疲れを防ぐために利用することもできます。

連続しての利用は30日までと定められており、
連続して30日を超えて利用する場合、
31日目からは全額自己負担(10割負担)となります。

同カテゴリー内の
「介護サービスをすぐ利用するために必要な3つの手続きを詳しく解説!」
こちらも参考として下さい。


3
.まず落ち着いて、怒らない

実際に異食行動を発見してしまうと、介助者の方も驚き
パニックがちとなってしまう場合もあります。

対象を怒ったり、大きな声をあげてしまうと、
口の中を硬く閉じてしまい、何を口に入れたのか?

確認が困難になる等、余計に対処が難しくなります。

まずは心を落ち着けて優しく話しかけましょう。

 

 

 

 

4.まとめ

どの様な対処をしても、想像以上の行動から、
異食をしてしまう事もあります。

言葉は悪いですが、
ある方は「知恵比べだね」と苦笑していました。

対処法で書いたレッグウォーマーでは、
全く何の根拠もなく、試した方法であっても、
効果が見られました。

なんとなくで行った行動も、
それはそれで、私は 「あり」だと思います。

確かに最近、根拠は!? 実例はあるの?
等、そこを求めてくる部分が強い傾向です。

ある意味窮屈に感じてしまう事があります。

確かに根拠も実例も大切です。

立場あると思いますが、
もっと伸び伸びやってみませんか?

答えはなく、
対象の事を心から思い沢山試してみて下さい。

そうすれば、根拠なんて大した事ではないです。

 

 

 

 

 

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