認知症の影響による不潔行為

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自宅や施設等、
オムツ交換や排泄のお手伝いは、
人として、生きている基本の一つとして、
とても大切な援助です。

日々の援助を行っていく中で、その援助に対し、
次第に慣れてゆく自分、がいると思います。

やらなくてはいけない事・・・
やらせて頂いてる事、
慣れるしかない事・・・
人によっては様々な思いがあります。

そんな中「不潔行為」に対しても、
私達は対応しなければなりません。

普段のオムツ交換や、トイレへの誘導とは違い、
突発的で、ある意味、心構えが出来ていない状態です。

オムツいじりや、放尿、放便
自分の便をあちこちに塗りたくっている、
そんな場面があります。

私は医療現場に長くおりますが、
ベテランの方でも予想外の「不潔行為」
の場面を見てしまうと、
落胆の声を上げてしまいます。

認知症の方は、わざとやっている訳ではないし、
どうしてよいかわからず、逆に困っている状態です。

私達は「不潔行為」に対して、
どの様に捉え、対処してゆけば良いのでしょうか?

 

 

1.不潔行為とは

不潔行為って?なんとなくわかるけど、
どこまでが、不潔なのかな?
もしかして人によっては感じ方が違うのかも・・・

考えると少し迷ってしまうかもしれません。

調べると、
・トイレ以外の場所に放尿する、
オムツを外して排泄するなどの行為。

・便をいじる、便を塗りつける等、不衛生な行為のこと。

・一般的に尿失禁や便失禁に関連するものがあり、
弄便(ろうべん)と呼ばれる行為も見られます。

では認知症において、
実際にはどのような不潔行為があるのでしょうか?

 

認知症における不潔行為とは、原因(中核症状、周辺症状)

認知症には大きく分けて中核症状と周辺症状、
に分かれております。

・中核症状
脳の機能が低下して起こる症状、
脳の細胞が壊れる事によって起こります。

判断能力の低下、物忘れ、言葉が出てこない等、
認知症の方であれば誰でもが抱える症状です。

記憶障害、見当識障害、失認、失行、
判断能力の低下、言語障害、等

見当識障害、失認=同カテゴリー内の、
「認知症における異食行為」
に詳しく記載されておりますので、
参考として下さい。

・周辺症状(BPSD)
周囲の環境や、本人が元々持っている性格が関係し、
せん妄、抑うつ、興奮、徘徊、睡眠障害、妄想、
等が起こります。

(中核症状)・認知症となり、今まで出来た事が出来なくなったしまった。

<周辺症状>・それが怒りに代わってしまう
怒りや興奮の症状が出てしまう

(中核症状)・認知症となり、今まで出来た事が出来なくなったしまった。

<周辺症状>・それによって落ち込んでしまう
悲しみや抑うつの症状が出てしまう

周辺症状は中核症状がその中心にあり、
そこに本人の性格や環境が元になって起こります。

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引用元:鹿児島認知症ブログ
http://www.ninchi-shou.com/entry/2014/04/23/060400

改めて、
認知症における「不潔行為」の原因は、
周辺症状によるものと言えます。

 

 

 

2. 様々な不潔行為とその原因

自宅や施設、病院等、
どの様な不潔行為が多いのでしょうか?

実際の現場の意見も多数聞きながら、
ご説明いたします。

「不潔行為」と聞いて頭に浮かんできたのは?
アンケートをとった所、

1.弄便 2.放尿 3.放便 4.汚染物を隠す

といった答えが多くを占めていました。

他にも、なんでも口に入れてしまう「異食」や
「オムツいじり」等の行為も、不衛生な行為である。
不潔である。との意見がありました。

「不潔」という言葉だけだと、
その範囲も人によって、かなり広くなりますね。

では、認知症における不潔行為といった視点で、
1.弄便 2.放尿 3.放便
4.汚染物を隠す 5.オムツいじり
について原因や、対処法をご説明してゆきます。

 

2-1.弄便(ろうべん)

1.弄便(ろうべん)とは

便をいじる行為で、便そのものが何か解らず、
手でこねてしまったりします。

また、自分の便を床や壁に擦りつけたり、
自らの顔や体に擦りつける、等の行為も見られます。

・原因

まず、便だという認識がない事が多いです。

オムツに便をして、何か不快感を感じてしまう、
何か不快なものが、お尻の辺りにあると感じ、
いじってしまう、オムツを外してしまったりします。

不快感があり、誰かを呼びたくても、
呼び方すら解らず、不快なものを何とか外に出そう、
としていじったり、オムツをはずしたりします。

混乱し、困り、オムツをいじった手で、
自らの顔や頭を触ったり、
シーツで何とかしようと試みたりして、
さらに状況が悪化してしまう場合もあります。

また、便をいじる感覚が「食べ物のあんこ」
に近い感覚でいじっていると聞いたこともあります。

本人は「あんこ」をこねている感覚かもしれませんね。

 

弄便の対応策

・排泄パターンの把握
食後、おやつの時間、寝る前、消灯後の何時位後と、
排泄のパターンをある程度把握出来れば、
排便をしてしまっていても、早めなオムツ交換対応等が出来、
対処が出来るため、本人も不快を感じる時間が少ないです。

施設等でも、ある程度決まった時間にオムツ交換をしていますが、
個別に時間を決めてオムツ交換をしている所もあります。

食べたものや、胃や腸の手術をしている等、
消化、吸収から排泄までの時間も変化します。

出来る範囲で個別対応をすれば、
弄便を防ぐ確立も高まります。

・出来ればトイレ誘導
上記の排泄パターンの把握とも繋がりますが、
やはり、トイレで排泄する事は気持ちの良い事です。

オムツとは違い、
原因の多くである不快感を感じません。

トイレで排泄後、その便をいじってしまう、
と言ったケースもありますが、
夜間だけはオムツを使用している方でも、
日中にトイレでの排泄が確立出来ていれば、
弄便行為はほとんど見られません。

トイレで排泄が出来る状態であれば、
排泄のパターンを把握して、
トイレにて行ってみて下さい。

・内服(下剤)の調節
下剤で排便のコントロールを行っている方もおります。

夕方内服すれば、翌朝に排泄があったり、
昼頃に内服する事で、翌日の朝や、
昼に排泄がある方もおります。

内服して数時間後に反応がある方もおります。

寝る前に内服する、と言ったパターンが多いですが、
その方に合った量や時間を検討し、調整して下さい。

・やむ負えない場合はつなぎ、手袋(ミトン)
色々な事を試したが、排泄パターンもバラバラで、
トイレにも行けない状態、下剤も上手く調整出来ない、
といった場合も多々あります。

自宅であれば尚更ですが、施設や病院であっても、
弄便の対処(後始末)は、肉体的にも、精神的にも、
大変な事です。

私も初めて見た時はショックであり、
何を、何から、やれば良いのか解りませんでした。

世の中では「拘束」という対応には、
賛否両論あり、まだまだグレーな部分はありますが、
オムツをいじれないような介護用の、
「つなぎ」や「手袋」を使用する方法もあります。

・誰かに相談しよう
自宅であれば、一人で悩まずケースワーカーに相談したり、
医療機関でも、仲間と意見を出し合う事によって、
どこかに解決の糸口はあります。

「つなぎ」や「手袋」に関しても、
誰かの意見を聞く事で何らかのヒントはあります。

「つなぎ」や「手袋」をつける時間帯の相談、
また、物によって、その材質や形にも違いがあります。

汚染物を口に入れてしまう場合等は、
認知症の方を守る事にも繋がります。

そして、介助者を守る事にも繋がるのです。

弄便は、介護者にとって心も身体にも、
大きな負担になりますので、家族だけ、
自分だけ、で頑張らないで下さい。

 

2-2.放尿(ほうにょう)

放尿とは、
一言で言うと「小便をする事」です。

便所以外の場所で小便をする事を「立ち小便」
と言ったりもします。

色々定義はありますが、
今回の場合は、便所以外の場所でおしっこをしてしまう、
という意味合いでご説明いたします。

例えば、ゴミ箱、衣装ケース、バケツ、タンス、
何もない床や廊下等で放尿してしまいます。

・原因

場所といった、その空間の見当識が障害されて、
トイレでは無い場所で放尿をしてしまいます。

尿意があり、排尿機能が正常にもかかわらず、
身体の運動機能低下や、認知症が原因でおこる尿失禁を、
機能性尿失禁といいます。

機能性尿失禁では、
身体機能の低下のためにトイレまで間に合わない、
歩行障害等、手や足が自由に動かない。

あるいは認知症のために、トイレの場所が解らない等、
(どこで、どうしたら良いか解らない)
判断力の低下によって起こるものです。

失禁についても、
様々な種類がある為、同カテゴリ-内
「認知症における失禁につて」
もご参考にして下さい。

では具体的にどの様な行動(放尿)、
をしてしまうのでしょうか?

・オムツに不快を感じ、オムツを外してしまう

弄便と同じく、オムツ自体に不快を感じたり、
すでにオムツ内に排泄をしていることによる、
不快感から、オムツの外に放尿してしまいます。

不快感には、
痒み、異物感、熱い、蒸れている、肌触りが悪い等、
私達が日頃身に着けている下着と比べると、
オムツをつけているだけで、かなり違和感や圧迫感があります。

私はお試しで、一日中オムツを使用し、
さらにオムツにおしっこをする体験をしました。

頑張りましたが、排便は出来ませんでした・・・。

心境として、あまりの違和感から、
すぐにでもオムツを外してしまいたくなるし、
人としての尊厳的な部分でも沢山考させられました。

・トイレの場所が解らなくなってしまった。

認知機能の低下によって、
トイレの場所が解らなくなってしまいます。

トイレの認識は残っていても、
トイレまでの行き方で昼なら解るけど、
夜になってしまうと、明かりや照明等の変化で、
全く解らなくなってしまいます。

・違う場所をトイレだと思っている

原因は解りませんが、
なんとなく自宅のトイレに似た環境や雰囲気がある。

そこに排泄すると落ち着く、気に入った場所である。

そこが排泄する場所だと強く思い込んでしまう。

また「遠い所のトイレに行くのは面倒だし、
ここのトイレ(タンス)は近くて良いな」
と言い、笑顔でタンスに放尿をする方もおりました。

・トイレまで我慢出来ない

機能性尿失禁であり、
歩行障害等、手や足が自由に動かない、
といった状態である為、間に合わず、
放尿してしまうケースです。

他にも放尿と同じく放便といって、
トイレ以外の場所で排便をしてしまう事があります。

タンスに放便をする方もおりました。

原因もほぼ放尿と同じと考えられております。

 

2-3.汚染物を隠す

汚れてしまった下着やオムツ等を、
何処かに隠してしまう事です。

原因

認知機能が低下しても、
汚してしまった、どうすれば良いだろう、
悪い事、恥ずかしい事、といった心境があります。

そして何とかしてその状況を、
収めようとして自分だけの力で頑張ります。

その行動の結果として汚れたものを隠す、
何処かにしまう、収納する、と言った行動をします。

又、汚してしまったものをとりあえず隠し、
後から洗おうという考えもありますが、
洗ってもしっかり洗えてないですし、
隠したまま忘れてしまう事がほとんどです。

施設や病院であればタンスの中やベッドの下、
布団の中、ゴミ箱、衣装ケース等に、
隠してしまう事が多いですが、
靴下や靴の中、TVの後ろ等に隠してしまう事もあります。

自宅では植木の中や、土に埋めてしまった、
という話も聞きます。

隠す事によってさらに汚染範囲が広がり、
「まったく二次災害だわ・・」と言っている方もおりましたが、
介助する側にとっては、本当に大変な事態ですよね。

では次に、弄便、放尿、汚染物を隠す
といった行動に対しての対処法を考えてゆきます。

 

 

 

 

3.不潔行為に対しての対応策と捉え方(7つの対応策)

1.排泄(生活)のパターンを把握する

ここからの対処法も、
弄便行為と被る説明はありますが、
合わせて読んで下さい。

しっかりとトイレで排泄が出来れば、
不潔行為は、ほぼありません。

排泄パターンを知り、トイレへの誘導がポイントです。

観察を重ねてゆく事によって、
何時頃に水分を飲んだから、そろそろトイレの時間かな?

今の表情や、あの仕草はトイレに行きたいサインだな、
といった事が徐々に解ってきます。

夜中であっても大体の時間が解れば、
トイレ誘導が可能です。

また、こちらから水分摂取の時間などを決め、
ある程度のパターンを作ってあげる事も大切です。

終日オムツを使用しており、寝たきりの方でも、
ある程度のパターンを掴んで、
オムツが汚染されている状態が短ければ、
不潔行為を減らす事が可能です。

2.環境の整備

出来れば、いつも歩く場所に手すりを設置したり、
障害となる物は置かない事が大切です。

手すりを設置する事で、トイレまで間に合ったり、
タンスや物品の位置を自宅に近い状態にしたことで、
安心感や、移動の違和感が減少して、
放尿、放便が減った例もあります。

ポータブルトイレの設置する事で、
トイレ、と認識して使用してくれる事もあります。

さらに、いつも放尿してしまう場所(廊下、部屋の隅、タンス)
等の場所にポータブルトイレを設置する事で、
解決に至った例もあります。

トイレまでの道順に目印や、トイレにトイレと、
書いた紙を貼る方法もあります。

夜間の明かりの消さず、ある程度はつけておきます。

出来る範囲でその方に合った環境を整える事も一つです。

3.衣類やオムツの調整

尿とりパッド、リハビリパンツ、テープ止めタイプ、
等あります。

尿とりパッドもかなり薄型で、
違和感が少なく使用出来る物もあります。

出来る限りオムツは使わない方が良いですが、
そうは言っていられない状況ですので、
合うタイプの物を使用するのが良と思われます。

排泄パターンでも述べましたが、
やはり早めのオムツ交換が大切です。

オムツが汚染されている状態が短ければ、
不快感も短く、不潔行為を減らす事が可能です

衣類も前空ボタンで簡単に更衣出来る物や、
肌ざわりの良いものもあります。

自立度に合わせて、使用してみて下さい。

4.抑制の場合も…

色々な方法を試みても、全く放尿や放便、弄便が収まらず、
介助者にとっても、かなりきつい状況もあります。

さらにその行為により、感染等のリスクが増す場合もあります。

その様な場合はミトン(専用の手袋)や、つなぎ(専用のつなぎ)
を使用する場合もあります。

使用する事によって、オムツいじり等が減少し、
弄便、放尿、放便もかなり抑えられます。

抑える=抑制行為
賛否両論ありますが、
様々な現場を観察すると、マンパワー、患者数、
患者の重症度、家族からの希望、医師の判断、
といった面から必要と判断する場合もあります。

身体拘束=厚生労働省の定義では、
身体抑制は「衣類または綿入り帯等を利用して、
一時的に該当患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限」
とされています。「身体拘束」とも呼ばれます。

さらに拘束には、スリーロックと言われる拘束があります。

・フィジカルロック=紐、手袋、つなぎ、抑制帯といった道具
で行動を抑制する。 物理的な拘束。
一番先に皆さん思い浮かべる拘束ですね。

・ドラックロック=物理的な拘束ではなく、
薬物の過剰投与によって、行動を抑制します。

・スピーチロック=「~してはダメ」「待って!」「何度も言いましたよね!」等
言葉による抑制といわれております。
明確な基準はありません。

ベッドや車椅子に身体を縛り付けて、
行動を抑制するといった認識が強いですが、
身体拘束の行為には薬の使用や、たとえ言葉であっても、
身体拘束にあたる行為になるのです。

拘束によって、新たな事故が増えたり、
認知機能がさらに低下する場合もあります。
必要最低限に抑え、拘束期間等もしっかりと話し合いましょう。

やはり対象は「人」「心をもった人」ですから。

5.汚染物を隠す行為には

汚染物を隠すといった行為に対しても、
上記1,2,3、の方法に加えて、

いつも汚染物を隠す場所、隠したことのある場所に、
幾つかゴミ箱やバケツを置く事で、
そこに汚染物を入れるようになったという例もあります。

6.たとえ放尿しても

重度の認知症であっても、失禁を指摘されれば、
何だか怒られている、良くない事をしてしまった、
と感じてしまいます。

あなたなりに、その方に合った、
気遣う配慮、言葉をかけてあげて下さい。

否定せず、怒らず、
なぜ隠したのか?相手の気持ちを考えてみて下さい。

7.誰かに相談する・プロに相談する

自宅での不潔行為は心身共に、疲労困憊してしまいます。

「排泄パターン? 環境の調整?
もう無理ですよ…疲れました」

夜中のトイレ誘導等、も続きませんよね…
毎日ですから。

デイサービスやショートステイの利用をして下さい。

地域の相談室やケアマネージャーに相談し、
対応を一緒に考えてもらって下さい。

誰かに相談すれば、徐々に道は開けます。

同じ悩みを持っている方は多く、
その様なコミュニティーもあります。

決して1人で考え込まないでください。

 

 

 

 

4.まとめ

不潔行為を見てしまうと、
イライラッとする事があります。

溜息をついて、落胆する時があります。

しかしイラっとしたその時、落胆したその時、
一瞬でも一秒でも良いので立ち止まり、
深呼吸し、考えてみて下さい。

「なんで対象はそういった行動をしたのかな?」
「あの人のまだ出来ている事は何だろう?」
「そして何で私はイラッとしたんだろう?」

この中の一つでも良いです。

毎回そう考える事によって、
次第にそれが一つ一つ積み重なり、
自分にも相手にも変化があります。

介護は大変です。

今あなたがどの様な状況や心境で、
介護されているかは解りませんが、
排泄物を片付け、対象を綺麗にしてあげる事、
とても尊い事です。

しかし、
頑張りすぎない、出来ない事は頼む、適当に、
これはこれであり!ちょっと意識すると、
変化ありますよ。

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引用元:http://blog.thompson-morgan.com/the-year-of-the-cosmos-2016/

 

 

 

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