認知症における昼夜逆転と夜間せん妄とは

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普段私達が生活をしていて、
休みの日に少しだけ昼寝をしてしまった。

いつもより遅くまで寝てしまった、
等、よくある事ですよね。

しかし、
ほんの少し生活のリズムが変化しただけで、
夜になかなか眠れなくなってしまった、
なんて事も。

でも、あっという間に休日も終わり、
無理矢理にでも元のリズムに戻される。

そんな日常もあると思います。

認知症の方も同じです。

たとえ施設や病院であっても、
何らかの原因で生活リズムが変化してしまうと、
昼と夜の感覚がズレてしまう事があります。

いったんリズムが崩れてしまうと、
私達よりも、その修正は難しくなると考え下さい。

さらにはそのリズムの変化(昼夜逆転)によって、
夜間におかしな発言をしたり、
時には家を飛び出してしまう等、
突発的な行動を起こす事があります。

そんな事になれば危険を伴い、目も離せません。

ここでは認知症における、
昼夜逆転、夜間せん妄について、
原因や対処法を含め、詳しくご説明してゆきます。

 

 

 

 

 

 

1.昼夜逆転(ちゅうやぎゃくてん)とは

「昼夜逆転」
とはいったいどんな状態なのでしょうか?

一般的に、
「深夜帯を活動の中心とし
朝から昼にかけて睡眠時間に当てている事」
となっております。

夜から朝方まで活動して、朝に寝る、
そのような状態を昼夜逆転といいます。

ではそもそも人間の睡眠は、
どのような仕組みとなっているのでしょうか?

 

 

 

2.睡眠のメカニズム

まず睡眠の役割とは、一言でいうと、
「身体機能を正常に保つこと」です。

眠れないと、身体がだるかったり、
頭がボ~っとして集中出来なかったりして、
普段起こさないミスをすることもあります。

さらにイライラする、なんだか気持ちが落ち込む等、
感情にまで影響を及ぼしてしまいます。

感情だけではなく、睡眠不足が続くと、
体調を崩して風を引いたり、生活のリズムが狂う等、
免疫の低下等も起こります。

このことからも睡眠は私達にとって、
心身共にとても大切なことなのです。

では睡眠の仕組みってどの様になっているのでしょうか?

 

レム睡眠・ノンレム睡眠

まず睡眠には浅い眠りの「レム睡眠」
深い眠りの「ノンレム睡眠」の2種類があります。

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図1.引用元:http://www.sofy.jp/nayami/kokoro/images/201311_graf.jpg

睡眠中この2つ(ノンレム睡眠・レム睡眠)
を約90分のサイクルで交互に繰り返しています。

・ノンレム睡眠中は脳が休息している状態で、
身体も休んでいますが、筋肉はある程度働いています。

心拍数、呼吸数は安定しており、
深くゆっくりとした呼吸状態です。

深さは3段階に分けられており、
深くなるほど脳は休息状態になっています。

・レム睡眠中は心拍数、呼吸数が増加し、
ノンレム睡眠よりも呼吸は浅くなります。

レム睡眠は全身の筋肉がゆるまっていて、
脳は活発に働いている状態です。

・通常、睡眠の前半は深いノンレム睡眠が多く
後半は浅いノンレム睡眠が増えます。

早朝にレム睡眠が多く出現してゆき、
この2種類の睡眠によって疲れた脳と体を回復させ、
朝に向かい徐々に覚醒のリズムがつくられています。

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図2.引用元:https://www.asleep-bedroom-project.com/about/basic/

以下の重要な役割もあります。

・細胞を修復します(ノンレム睡眠・成長ホルモンの分泌)
成長ホルモン=身長を伸ばすイメージが強いですが、
それだけではなく、免疫、骨、集中力、筋力維持、
脂肪分解等様々な役割があります。

・免疫力を高め、保ちます(ノンレム睡眠)

・脳のオーバーヒートを防ぎます(ノンレム睡眠)

・記憶の整理、精神を健康に保ちます(レム睡眠)

図1.のようなリズムを形成する事が、
理想的な睡眠と言えます。

 

 

 

3.高齢者における睡眠の特徴

高齢になると身体の整理的変化があり、
血圧、体温、ホルモン分泌等、
睡眠に関わる生体機能リズムが乱れやすくなります。

・生理的に1日の睡眠時間としては、
新生児=16~17時間  1歳児=12~13時間
小児期=10~12時間  青少年期で8~10時間
青年期から中年期=7~8時間

その後は加齢とともに、
睡眠時間は短縮する傾向にあります。

高齢者は深い睡眠のノンレム睡眠の時間が、
短くなってしまいます。

高齢者は、眠りに入りにくいうえに、眠りが浅く、
途中で目覚めてしまう事が多いのが特徴です。

 

 

 

4.認知症における昼夜逆転とは

上記にて、高齢者における睡眠の特徴を、
ご説明いたしました。

では認知症が及ぼす昼夜逆転とは?

・神経伝達物質の変化による影響

認知症で見当識障害のある方は、
なぜか夕方頃から落ち着かなくなり、
いつもなかなか寝つけない。

夜間に目覚めると周囲が暗くて、
自分がどこにいるにか分らず、
不安な気持ちなってしまう。

それにより、
家の中を歩き回ったり、外に出てしまう、
時には興奮してしまうこともあり、
一晩中眠れずに、朝方疲れて眠ってしまう。

といったような原因によって、
睡眠障害の症状が見られます。

見当識障害=日時、場所の理解や方向感覚などが失われ、
自分が置かれている状況を判断する事が出来ない状態です。

今居る場所が分からない、日付や時間が分からない、
知っているはずの人を見ても、誰だったか思い出せない等の、
症状があります。

見当識障害の原因として、
脳血管障害、アルツハイマー病、統合失調症、
薬剤の副作用、事故等での頭部外傷、脳炎、
睡眠障害等が原因となっております。

又、神経伝達物質量の変化によって、
自律神経の調整機能が低下してしまい、
昼は活動、夜は休息というリズムが崩れてしまいます。

神経伝達物=神経細胞のシナプスからシナプス間隙に向けて、
放出される物質で、情報伝達に関わります。

神経伝達物質には様々な種類がありますが、
アセチルコリン、ドーパミン、ノルアドレナリン、
アドレナリン、グルタミン
GABA、グリシン等、が代表的です。

自律神経=自分の意思とは関係なく、
体の機能全体をコントロールしている神経です。

自律神経には交換神経、副交感神経があります。

 

・薬の副作用

抗がん剤、血圧、気管支拡張剤等、
高齢となれば抱えている疾患から、
内服している薬の内容や量も様々です。

そんな中、認知症治療薬でも副作用があり、
興奮して夜に寝れなくなったり、
逆に眠気が強く、昼間から寝てしまい生活のリズムが、
変化してしまう事もあります。

夜間に寝れない事から睡眠薬を調整したが、
上手く作用せずに昼夜逆転を悪化させてしまう事もあります。

4-1.どんな症状なの?その原因は?

1.心配・不安感の増強

夜間トイレに行くことは誰でもありますよね、
トイレに起きたのはよいが、トイレの場所を忘れてしまう、
さらには、トイレに起きたが、歩いている間に何をする為に、
自分が起きたのかが解らなくなってしまう。

このような事があります。

トイレの場所が解らない、何をしに起きたのか解らない、
辺りは暗くて・・・不安、怖い、といった感情が、
どんどん増してゆきます。

その感情によって、家の中を歩き回ったり、
玄関から思わず外に出てどうしたらよいか解らず、
歩きまわってしまうのです。

 

2.幻覚や幻聴、妄想が出現する

夜間に歩き回っている間に、妄想等の症状が、
出現する事も多々あります。

「孫が駅まで遊びに来ているから迎えに行く」
「これから子供の夕飯を作るから買い物に」
「夜だから家に帰らなくては」と故郷を思い出したり
「向こうで誰かが呼んでいるから」と幻聴があったり

これらも神経伝達物質による影響があります。

 

3.生活リズムの変化

高齢となると睡眠時間の変化がある事はご説明しました。

さらに加えて説明すると、
高齢になると視交叉上核(しこうさじょうかく)
の働きが低下してしまいます。

視交叉上核=左右の視神経が交差する視交叉の上部にある、
神経細胞の集まりを言います。
光を受けて、約24時間周期のズムを生み出し、
体内時計を調整する役割を果たします。
生活リズムの調整に関係する重要な役割です。

高齢となるだけでも視交叉上核の働きは低下しますが、
認知症になると加齢の自然な変化に加えて、
その働きがさらに低下してしまいます。

その結果さらに昼夜逆転が悪化してしまいます。

 

4.環境による影響

・引っ越しや入院等による急激な環境の変化、
・家具、布団、ベッド等の寝類具の変化
・衣類の調整が気温や室温、季節にあっているか
・友人や家族の死別等

この様な環境の変化によっても、
夜間の睡眠リズムが変化してしまいます。

 

 

4-2.対処法

1.心配・不安感の増強

トイレまでの道順を壁に貼ったり、
トイレにトイレと書いた紙を貼る事でも、
混乱の防止につながります。

夜間の電気は全て消さずに、
ある程度の調整もしてみて下さい。

施設であっても、家具や枕、ベッドの位置等、
出来るだけ自宅に似た環境にすることで、
安心感も得られます。

 

2.幻覚や幻聴、妄想が出現する

無理に行動を止めようとしても、かえって興奮や、
反発してしまう事があります。

まずは、否定せずに受容する事からスタートです。

「何かお探しですか?」「お手伝い出来ることはありますか?」
「どうしましたか?」「どこへ出かけますか?」
と声をかけてあげてください。

声をかける時には、
コマニチュードといった手法があります。

コマニチュード
同カテゴリ内の「認知症と徘徊」を参考としてください。
http://kaigojoho.com/dementia-wandering?view_excpt=true

 

3.生活リズムの変化

視交叉上核は日光を感知すると、
メラトニンという睡眠作用のあるホルモンを分泌させます。

メラトニンは分泌されてから、約15時間前後に睡眠を促します。

昼夜のバランスを正常に戻す助けとなります。

例えば朝7:00に日光を浴びてメラトニンが分泌されれば、
21時〜23時頃の間に眠くなるような計算になります。

基本的な生活を改善する事で徘徊など、
認知症における症状が、徐々に落ち着かれる事は多いです。

夜間せん妄の軽減や防止にもつながり、
介護負担の軽減にも繋がります。

又、適度な運動を行う事によって、
身体に刺激が加わり、生活リズムだけでなく
ストレスの発散や脳にも良い影響があります。

徘徊が治まるだけでなく、
運動はそれだけで様々な効果が得られます。

散歩や体操等、無理のない範囲で行ってください。

朝になったらカーテンを開けて体操をしたり、
散歩に出かける等、習慣をつけて下さい。

 

4.環境による影響

住む場所が変化する事は、健常な方にとっても、
大きなストレスが加わります。

高齢者や、さらに認知症の方であれば、
なおさら環境の変化への対応に時間がかかります。

いつもと違う枕だと寝付けない等、よく聞きますよね、
肌感覚や匂い、そのちょっとした感覚でも、
睡眠に影響を及ぼすことがあります。

友人や家族との別れも、精神的にかなりの
環境の変化と言えます。

高齢となればなおさら別れの頻度も多くなります。
受け入れるまでに時間もかかります。

就寝前に入浴したり、温かい飲み物(白湯がおすすめ)
を飲んだり、体を温めてから布団に入るようにすると効果的です。

・寝室の室温や寝具の調整
・空腹の状況
・身体の不快感(乾燥による痒み等)
・尿意の有無
・不安や悩み事

一つ一つチェックして改善してゆきましょう。

寂しさ不安さなども、話をただただ聞いてあげるだけで、
かなり落ち着かれます。

そして相手を抱擁(ハグ)する事で
「幸せのホルモン」がお互いに、
放出される事は実証されています。

日本人は少し恥ずかしさ、
もあるかもしれませんが、言葉では伝えられない
そんな温かな効果があります。

 

5.医師への相談、地域サービスの利用

様々な対策を行ってもなかなか改善に向かわない、
そんな事もたくさんありますよね。

一人で考えず相談して下さい!
最低限の睡眠薬を処方してもらう事で、
夜間しっかりと眠れてバランスを調整できる事もあります。

まずどこに相談すれば解らないときは、
市町村の窓口もありますので活用してください。

「地域支援包括センター」
地域の高齢者やそのご家族のための最初の相談窓口です。

介護に関する相談や悩み以外にも、
福祉や医療、その他いろいろなことの相談できます。

設置主体は、市町村等各自治体です。

 

 

 

5.夜間せん妄とは

ここからは昼夜逆転とも関わりに深い、
夜間せん妄についてご説明してゆきます。

A woman, suffering from Alzheimer's desease, walks in a corridor on March 18, 2011 in a retirement house in Angervilliers, eastern France. AFP PHOTO / SEBASTIEN BOZON (Photo credit should read SEBASTIEN BOZON/AFP/Getty Images)

引用元:http://i.huffpost.com/gen/1263748/images/h-ALZHEIMERS-628×314.jpg

まず「せん妄」ってどんな状態、症状なのでしょうか?

せん妄=意識障害が起こって頭が混乱した状態です。
一時的な脳の機能低下によりバランスを崩した状態です。

その混乱や機能低下した状態が夜間に起きる症状を、
「夜間せん妄」と言います。

5-1.症状と原因

では実際にどのような症状があるのでしょうか?

・幻覚や妄想が生じる
(なにか見える、声が聞こえる)

・無表情や無気力
(顔に表情がなく一点を見つめている、寝てばかりいる)

・錯乱や興奮状態となる
(暴力、大声、落ち着かず動き回る)

せん妄にもタイプがあり、3つに分けられます。

1.過活動型

せん妄のなかでも一番多く見られるのが過活動型です。

幻覚、妄想があり、さらに興奮して叫ぶ、暴れる、
といった行動が見られます。

 

2.活動低下型

混乱や活動の低下がみられます。

過活動型とは反対に、無表情や無気力、
といった症状が目立ちます。

布団から出ずに過ごし、眠っているのか起きているのか分からない、
顔に表情がない、そんな状態も見られます。

うつ病と間違われやすく、
医療者であっても、症状に気がつきにくい状態です。

 

3.混合型

過活動型、活動低下型、上記2つのタイプの特徴が、
交じりあった症状があります。

急に興奮したり、全く反応がない等の症状です。

・せん妄の原因

ストレス、脳血管障害、環境の変化、
アルコールを止めた後に起こるせん妄、
薬の影響、手術後せん妄等、様々です。

上記の影響によって、一時的な脳の機能低下がおこり、
意識のバランスを崩した状態となってしまいます。

 

 

5-2.対処法と治療

基本は精神の安定や、生活のリズムを整えて、
それでも改善しない場合は薬を用いて治療します。

薬と併用しながらリズムを整える方法もあります。

対処法や予防法は、昼夜逆転に記載した対処法に準じて
参考としてください。

1.心配・不安感の増強
2.幻覚や幻聴、妄想が出現する
3.生活リズムの変化
4.環境による影響
5.医師への相談、地域サービスの利用
(4-2対処法より)

また、
「せん妄を治療する薬」といったものはなく、
抗精神薬や抗うつ薬が用いられます。

薬によって、かえってせん妄を悪化させてしまう、
そのような場合もあるので、慎重に処方されます。

 

 

 

6.認知症とせん妄の違い

ここまでご説明しましたが、長年医療に関わっていても、
「認知症」と「せん妄」の区別が解らない事も多いです。

認知症であり、かつせん妄もある状態ではなおさらです。

特に発症時であれば、看護師であっても、
医師であっても判断に迷う事は多いと言えます。

では、どのようにして、
その違いを見分ければよいのでしょうか?

せん妄の診断基準

A. 注意の障害(注意の集中や維持の低下)と、

意識の障害(環境認識の低下)がある。

B. 短期間で出現し(通常数時間から数日),日内変動がある。
C. 認知の障害(記憶障害、見当識障害、知覚障害など)がある。
D. AとCの障害は認知症ではうまく説明されない 。
E. 身体疾患や物資中毒・離脱などの直接的な生理学的結果により、

引き起こされたという証拠がある。

(米国精神医学会. DSM-5, 2013より一部改変)
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引用元:https://www.tokyo.med.or.jp/publications/genki/0070/images/fig-03-02.gif

認知症とせん妄の大きな違いとして、
せん妄は発症時期が特定できますが、
認知症は、はっきりとは解りません。

せん妄の症状が1日の中で変化しやすく、
意識がはっきりしている時間も多いです。

しかし認知症の場合は、ほぼ症状は一定であり、
時間の経過とともに進行していきます。

せん妄は、原因や病気が改善すると元通りに回復しますが、
認知症の改善は難しいと言えます。

 

 

 

7.まとめ

認知症における、せん妄、昼夜逆転等、
その症状が起こる方もいれば、
起こらない方もいます。

その違いは?食事、生活環境、性格?
勿論それらの影響もあるとは思います。

じゃ運命?・・・私的に、
運命論みたいなもの、は解りませんが、
多くの方々と触れていると、
それも否定出来ないかなって思う事もあります。

私の家族も認知症です。

様々な事がありましたが、
多くの助けによって、救われました。

この記事だけでなく、色々なサイトでの知識、
人の助けを借りて下さい。

大丈夫!!!です。

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引用元:
http://media.indiatimes.in/media/content/2013/Aug/old_couple_1376749999_540x540.jpg

 

 

 


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