認知症における性的な行動や言動

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認知症の方の性的行動、問題?と言って良いのか、
どこまでが「問題」なのか?
自宅や医療の現場でも日常起きています。

同じような事が起きても、
あなたは平気でも、私にとっては大問題、
「辛い、苦しい、本当に困っている、もう耐えられない!」

年齢、経験、性格、性別、関わる人によっても、
捉え方に、大変大きな違いがあります。

そこに正解はないと思います。

そして明らかな「性的問題」として捉えたとしても、
実際の現場では目を瞑ってしまう等、
「いつものことと」してやり過ごす事が多いです。

性的問題はあまり触れてはならない事、伝えにくい事として、
自分1人で抱えてしまう事も多々あります。

実際に悩まれてる方、これから学びたい方等、
何かのヒントを掴んで頂ければ、と思いご説明いたします。

 

 

 

1.認知症における性的問題行動とは

そもそも問題行動とはどこまでの行動や言動、
をもって「問題」と言うのでしょうか?

一般的には、
性行為を迫る、卑猥な事を言う、異性の身体を触る、
自分の性器を見せびらかす。

等がよく挙げられています。

しかし、一般的に言われている事の、
全て「が問題」とは言い切れません。

 

1-1.どこまでが問題なの?

実際に現場の声を聞いてみると、


「そんな事日常茶飯事だし」「全くきにしない」
「可愛いもんよ」「セクハラ?元気な証拠よ」
「ちょっと触るくらい、別に・・・」
「いちいち気にしていたら仕事にならない」
「慣れてる」「別に良いけど」等、
ほぼ気にされていないと思われる方。

②ある一方では、
「気持ちが悪い」「卑猥な言動だけでも結構落ち込んだ」
「イライラする」「しょうがない、仕方ない」
「良い気分はしないけど、誰かに言っても変わらないし」
「出来る事なら止めてほしい」「絶対触られたくない」等、
かなり抵抗感をもっている方。

③自宅での介護であれば、
「家族の事だから落ち込こんだ」
「戸惑いました」
「最初はとてもショックを受けた」等、
在宅ならではの悩みを抱えている方。

冒頭でもお話しいたしましたが、
感じ方、捉え方は本当に様々でした。

寝たきりで身体の動かせない患者に、全く同じ言動、
(表情や目つき、場の雰囲気までは解りませんが)で性的な発言を言われたとしても、
人によって感じ方が全然違います。

グレーな部分で倫理観な答えになってしまいますが、
誰がみても①②③の全員が、
性行為を迫る、自分の性器を見せびらかす等に対しては、①の方々も含めて、
「慣れては要るけど、それは問題行動よね」という考えも持っています。

医療現場によっては、個々の感じ方よりも、
具体的に何らかの言動や行為で、
「問題行動」して捉える場所もあります。

しかし、その人の感じ方で問題か?問題でないか?
も決まってくる現実も確かにありました。

では次にどのような「性的行動」
が多いのか具体的に見てみましょう。

 

1-2.どんな性的行動が多いのか?

・突然抱きつく、胸やお尻を触ってくる
・男性の患者が女性患者の部屋に入り込む(患者間での問題行動)
・女性患者の入浴を覗きに来る
・下半身を見せびらかす、性器に触れる様に迫る
・卑猥な言動を言う、言い続ける
・性行為を迫る
・夫の父が布団の中に入ってきた
・特定の職員につきまとってしまう
等が多く聞かれます。

これらの中にも、その人と関係性や感じ方等から、
問題と捉える感覚は人によって差はあります。

 

 

 

 

2.性的行動の原因

では、なぜこのような言動、行動が、
起こってしまうのでしょうか?

病抱えている疾患、
過去の生活状況、家族や交友関係、
学歴や職歴(その場の人間関係や役割も影響する)
世代(時代によっての感覚や抑圧感)、

病気からだけでなく、
今まで行ってきた本人の生活歴も要因となってきます。

ひとつの原因として、認知症により、
その要因が表にでた、とも言えます。

 

2-1.人間としての性

性欲とは、人間の三大欲求の一つといわれております。

人間も動物であり、
動物には子孫を残そうとする機能が備わっております。

どんな動物でも性があり、生物は本能的に性を求め、
それは健全で自然だということです。

性欲は自己を守ろうとする機能であるとも言われています。

調べてみると、抽象的な言ではありますが、
禅問答で「性の世界は、神からの贈り物」と言われております。

これについても賛否両論はありますが、
理解いただければと思います。

 

2-2.高齢者の性

高齢者(老年期65歳以上)の性について、
どのように考えられているでしょうか?

私も色々な所で声を聞いた所、
老人に性は必要ないのでは?老人の性はいけない事と考える人もいました。

さらに歳をとれば性欲は自然に枯れてゆくものであり、
それが自然の流れである。

ある程度の年齢になると、
一般的に性欲は無くなるし、必要がない、
言いかえると、性は不要のものである。

と言う考え方が多い事を感じました。
勿論医療現場においての感想も多く含まれます。

しかし、実際には決して一般に考えているほど、
老人は性に関しての衰えを見せていないのです。

65~69歳の男性の39%は毎月性交
配偶者のいる40~70代の男女1000人を対象、
1999年10月~2000年3月にかけて行った調査。

高齢者と呼ばれ始める65~69歳男性のうち、
週2回以上性交をする人が2%いた。

週2回以上=  2%
週1回=    7%
月2~3回= 18%
月1回=   12%
年数回=   27%
この1年なし=35%

同年齢層の女性では、
週2回以上=  0%
週1回=    8%
月2~3回=  20%
月1回=    8%
年数回=   23%
この1年なし= 43%

この調査は配偶者との性交に限定したもので、
「婚外交渉」は反映されていません。

男女とも、年齢層が上がるにつれて、
「この1年なし」の割合が明らかに増えています。

年齢を重ねるにつれて、
性行動が「ごぶさた」になることが読み取れます。

その一方でパートナーとの豊かな性生活を、
エンジョイしている高齢者も少なくありません。

実際、調査の最高年齢層である75~79歳では、
男性の11%、女性の17%が、
「月2~3回性交する」と回答しています。

引用元:考えておきたい「高齢者の性」
http://allabout.co.jp/gm/gc/379380/
米国の高齢者3000人余りを対象に行われたシカゴ大の調査で、
80~90代の高齢者の間で性交渉が重視され、
病気などの問題にもかかわらず、
楽しもうとしていることが明らかになっています。

調査では、57~64歳の回答者の73%が、
「過去1年間で少なくとも1度は性交渉した」と答えました。

65~74歳になるとこれが53%に減り、
75~85歳では26%まで低下。

女性は(加齢とともに)パートナーがいる可能性が減ることから、
性的に不活発になる傾向が見られます。

同大のステイシー・テスラー・リンドー氏によると、
男性の約50%、女性の約25%が、
性的なパートナーの存在の有無にかかわらず、
自慰行為を行っていることも分かった。

同氏は、加齢とともに性交渉は減るものの、
80~90代の男女の相当数がなんらかの形で、
性行為を続けていると指摘しております。

引用元:80~90代の高齢者、性行為を望む傾向=米調査 ロイター
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-27534420070823

男女差はありますが、この調査からみても、
性欲も生殖能力も、一般から想像されるより、
衰えてはいない、と考えられます。

又、時代やライフスタイルの変化によっても、
営みはかわってきている、と言えます。

 

2-.3認知症による性的行動の原因

では性的な行動の原因に、
認知症がどのように影響しているのでしょうか?

その原因をご説明してゆきます。

 

2-3-1.脳

認知症においての様々な原因はありますが、
脳内の神経細胞が減少し脳が委縮してしまい、
高度の認知障害や知能低下、人格の崩壊などが起こります。

初期段階では人や物の名前を忘れるなどの、
記憶障害がおこり、徐々に生活への影響が現れてきます。

その経過のなかで、被害妄想や幻覚などが出現することもあり、
暴言、暴力、徘徊、性的な問題行動が起こりやすくなります。

重症化すると家族のことが解らなくなったり、
意志疎通が難しくなってきます。

また「記憶の逆行性喪失」により記憶が昔に戻り、
本人は若い時代の気持ちで行動してしまいます。

若かった時代に戻っている可能性があり、
介護者を妻だと思っている事もあります。

息子や嫁などの見当がつかなくなっており、
誰に対しても遠慮しなくる、といった傾向も見られます。

「記憶の逆行性喪失」=
蓄積されたこれまでの記憶が、現在から過去にさかのぼり、
失われていく現象をいいます。
自分が子どもの頃に返っていて「そろそろ夕食だから帰らないと」とか
結婚前に戻っており、名前をと聞くと旧姓を言ったりします。
10、20年分の記憶をそっくり忘れてしまうことです。

脳の損傷部位や生活歴等によって、
人により様々な変化をおこしますが、
理性をコントロールするのが難しくなり、
このような性的言動や行動が見られる事があります。

 

2-3-2.心

性的問題行動に直面した時、
「認知症だから脳の病気」であり、
病気が「そうさせている」と捉える事が多いです。

しかし、引き金は脳の萎縮や損傷であったとしても、
実は本人が求めていたのは、
寂しさや孤独感を埋めてほしいという

・「寂しい・・・安心したい」という気持ちです。

勿論全てではありませんが、
身体的な触れ合いによって安心したいのです。

子供が母親に抱かれることによって、
安心できる事と同じような心理と言えます。

ですので認知症高齢者の性的欲求は、
全てが直接的な行為を求めているとは限りません。

認知症によって入院したり、施設に入る等、
家族から離れてしまった、寂しさ、不安感、切なさ、
その想いが原因となり、寂しい気持ちを埋めたい事から、
性的問題行動を起こします。

・「まだ自分は心も身体も元気だよ」
自分としては、心身ともに元気である、という事を主張したい気持ちです。

介護をうけたり、病人扱いされているけれど、
まだまだ自分は元気!という自尊心を持っています。

その部分を傷つけられたくない事から、
性的な行動を行ってしまいます。

以上の事より、
ただ単に性的な興奮から欲求を満たすだけ、
とは違い、脳や心理面でも様々な要因があり、
性的な行動を行っている事が解ります。

 

 

 

 

3.高齢者、認知症、性の介護

今までの説明によって、
少しは認知症の方における性的な問題、
をご理解して頂けたかと思います。

しかし、理由はどうあれ、
実際に介護をされている方にとって、頭では理解出来たとしても、
それこそ心や体の部分では、性的な問題行動に対しての拒否感や、
マイナスな感情は払いきれないというのが実情ではないでしょうか。

ここからは、実際に問題行動に直面した場合、
どの様に対処してゆくか、現場の声を参考にしながらも、
出来る限りご説明してゆきます。

 

3-1.性的問題行動への対処方

始めにお伝えしておくと、
これは完璧な対処法です!!といった理論は存在しません。

一人一人の生活歴や、環境によって違いがあります。

それを踏まえた上で実践した結果をお伝えしてゆきます。

・欲求を違うエネルギーに変換させる。

性的欲求も何らかのエネルギーの一つです。

このエネルギーをどのように変換させてゆけばよいのでしょうか?

夜間に性的行動を起こしてしまうパターンであれば、
夜間眠れるように、日中での散歩、レクリエーションの参加、
地域の老人クラブや、コミュニティーの参加、趣味や運動など、
日中の活動量を増やす事で解消につながります。

日頃からも、歌うこと、好きな曲を聴くこと、絵を描くこと、
ガーデニング、ゆっくりと話す事等、様々行ってみて下さい。

・「寂しい、安心したい」といった気持ちに対しては、
安心できるようなスキンシップを行う。

身体をマッサージしたり、手を握りながら声をかける。

手を繋いで散歩に行ったり、
何かの作業を一緒にすること、一緒の時間を過ごす事。

自宅であれば、夜間は介護をする側(家族)の、
寝室に鍵をかけるのも一つの方法ではあります。

本人が問題行動を起こしやすい時間帯で、
コーヒーやお菓子の時間にする等、
本人のパターンを把握して事前に対処する方法もあります。

これだけでもかなり多くの方の、性的な行動は落ち着かれる、というデーターもあります。

・はっきりと伝える

認知症の程度や、脳の萎縮状態、
その行動を起こす原因にもよっても効果は違いますが、
本人の目を見てハッキリと否定する事も必要です。

その都度ハッキリ否定する事で、本気の気持ちは伝わるものです。

実際に毅然とした態度で接する事によって、
性的行動が減少したケースもあります。

ここで注意してほしい事は、
威圧的態度や口調は逆に混乱や不安を招き、
相手を暴力的にさせることがあるので注意して下さい。

 

3-2.悩みを抱えている方々へ

問題行動の対処法とも重なりますが、性的な問題行動に関しては、
「誰にも言えない、恥ずかしい、皆に馬鹿にされるかも、
他の人は困っていなくて私だけの悩みだし、大袈裟に出来ない、
悩みを抱えているのは皆だし、自分だけじゃないから・・・」
という気持ちなどから、相談できない人が多いのも現状です。

しかし、家族でも施設の介護者であっても、
抱えているストレスはかなり大きなものです。

決して1人で悩むのではなく、家族、同僚、
ケアマネージャー、看護師や医師等に相談することは大切です。

勇気をだして相談してください。

あまりにも問題行動が著しい場合は、
薬(漢方や精神薬)で抑えることもあります。

私が関わった中にも、
色々な対処法を試みましたが、性的な行動が収まらず、
ある一定期間隔離状態として、
徐々に薬等で調整した現実もありました。

本当に、何をやってもなかなか問題行動が落ち着かない、
そんな状況はあります。

介護者が余裕をもてる環境が整ってなければ、
穏やかな気持ちで接する事は難しいと思います。

同僚が家族が何か変だ?困ってるかも?
と感じたら、声をかけてあげて下さい。

家族や施設が一丸となって行動する為には、
あなたの勇気が必要であり、
小さな小さな勇気であっても、徐々に大きく変化します。

あなたの心と身体を大切にしてください。

勇気をだして、本気で相談してください。

必ず伝わります。

 

 

 

4.まとめ

ここまで読んでくれた方の中には、
結局無理!私の職場では、今の立場では環境では困難、
と思ってしまうかもしれません。

でも、あなたの小さな一歩が広がりを魅せます。

そしてもう一つお伝えしたいことは、
その方の生きてきた背景を考え、本気で想像し、
そこからくる思いから接する事、綺麗ごとではなく、
「温もりもって接する事」だと思います。

ロボットや機械には出せない、
「温もり・・・」
ここに、これからの介護に向けての
何か大きなヒントが、隠されていると思います。

 

 

 

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