認知症と徘徊

「徘徊」なぜこのような行動があるのでしょうか?
ひたすらに歩き続けたり、満足?ゆくまで歩く。

車椅子の方であっても同じで、
車椅子で廊下や室内を動き続けている。

自宅においては、いつの間にか出かけてしまい、
迷子になっていた、保護され戻ってきた。

歩く、動く、さまよっている様にも見える。

いったい何が目的なの?
どこに向かい、何を探しているの?

そんなに沢山動いたら、とても疲れるでしょう、
私にはあなたのゴールが見えないの・・・。

少しだけ詩的、になりましたが、
ここでは「徘徊」についてご説明いたします。

1
引用元:https://www.scribendi.com/advice/the_wandering_only.en.html

 

 

 

 

 

1.徘徊とは

辞書等で「徘徊」を調べると、
・目的もなく、うろうろと歩きまわること。

・無意識のうちに、あてもなく歩きまわること。

・目的や目標はもとより、自覚しているか否かも、
はっきりしないまま動きまわること。
とあります。

意味もなく目的もなく、といった説明ですね。

また、統合失調症等、
精神疾患による影響での徘徊もあり、
幻聴により「歩け」と言われている、
妄想により「操られている」と、
自ら止められずに歩き続ける行動もあります。

統合失調症=
統合失調症の症状は、大きく陽性症状と陰性症状の、
2に分けることができます。

陽性症状は、幻覚や妄想など統合失調症の目立つ症状をいい、
陰性症状は対照的に自閉(引きこもり)や、
様々な表現が乏しくなるなど、
感情の目立たない症状をいいます。

認知症による徘徊は、意味もなく歩く、行動する、
といった事ではなく、その人なりの理由があります。

 

 

 

2.認知症における徘徊の原因

認知症には大きく分けて中核症状と周辺症状、
に分かれております。

・中核症状=記憶障害、見当識障害、失認、失行、
判断能力の低下、言語障害、等

・周辺症状=せん妄、抑うつ、興奮、徘徊、
睡眠障害、妄想等

中核症状が中心にあり、
その周囲に周辺症状があります。

*中核症状や周辺症状に関して、
同カテゴリ-内の「認知症の影響による不潔行為」
を合わせて読んで頂くと参考となります。

http://kaigojoho.com/dementia-incompetence
自分のいる場所や時間の見当識障害を受け、
本人の生活習慣や性格等が影響して「徘徊」
という形になります。

見当識障害=日時、場所の理解や方向感覚などが失われ、
自分が置かれている状況を
判断する事が出来ない状態です。

今居る場所が分からない、日付や時間が分からない、
知っているはずの人を見ても、誰だったか思い出せない等の、
症状があります。

見当識障害の原因として、
脳血管障害、アルツハイマー病、統合失調症、
交通事故、薬剤の副作用、頭部外傷、脳炎、
睡眠障害等が原因となっております。

「この様に、認知症における徘徊の原因は、
まず、中核症状である見当識障害があります。
そこに周辺症状が影響して「徘徊」
が起こります」

 

 

 

3.徘徊の行動とその理由

では認知症による徘徊とは、
具体的にどの様な行動があるのでしょうか?

自宅であれば、
1.家の中をとにかく歩き回る。

理由として、
何か探し物をしている事が多いです。

何年も前に捨ててしまった物、人に譲った物、
いつも使用している眼鏡や衣類、家の鍵等、
突然昔の物を思い出したり、
単純にどこかに置き忘れた物を探し始めます。

なかなか家族が訂正しても、
「誰にもあげてない、捨ててない」
と言い納得してくれません。

物だけでなくトイレの場所や自分の部屋等、
毎日使用している場所であっても忘れてしまい、
家の中を歩き回ってしまいます。

2.いつの間にか外へ出てしまう

かなり多い行動の一つですね、
一人で外出して、迷子になってしまったり、
交通量の多い場所等では危険も伴います。

認知症の方が電車にひかれて、
裁判となっているケースもあります。

アルツハイマー型認知症の方は、
近所を歩いていたつもりでも、元の場所に戻れず、
遠い場所まで行ってしまい保護される事がよくあります。

理由として、
「会社に行かなくては」
「自宅に帰らなくては」「子供を学校に迎えに行く」
「ちょっと散歩」「夕食を作るから材料を買いに」
「母親が食事を作って待っているから家に帰る」
と言い故郷を思い出し、そこに帰ろうとします。

さっき食べた事を忘れてしまい食事を買いに行く、
等様々な理由があります。

3.夜間や深夜になると徘徊してしまう

夜中にふと気が付くと、いなくなっている!
足元も暗いですし、目印も見えにくい、
発見される可能性も低下して、
事故等、命に関わる事に巻き込まれやすくなります。

昼間以上の危険が伴います。

認知症に限らず高齢になると、
身体の様々な変化から生活のリズムにズレ、
が生じてきます。

そのことによって、昼夜のリズムが変化してしまい、
夜間の活動が高まってしまう事があります。

理由として、
トイレを探していて外に出てしまい、
そのまま帰れなくなってしまった。

目覚めたら周囲が暗くて、不安や孤独、寂しさに襲われ、
家を飛び出してしまった。

等、昼間の徘徊の理由加え、夜間ならではの特徴があります。

さらに夜間せん妄という症状があります。

せん妄=
脳の病気や薬の副作用によっておこる事が多いです。

何らかの原因やきっかけで、
脳の機能が低下して、意識の障害がおこります。

それによって、
興奮、大声を出す、怒りっぽくなる、
意識が混乱して、幻覚や妄想を起こしてしまう事もあります。

脳が混乱してしまう。

そんな状態と考えて良いと思います。

例を出してみると、
今まで掃除なんてした事がないのに、
突然深夜に起きだして、掃除を始めてしまった。

家中のカーテンを洗い出したり、大掃除を開始した。

夜間になるといつも怒りっぽくなる。

大体決まった時間になると、外に出ていく。

「子供が遊びに来た、人がそこに立っている」
等、事実と異なる事を言っている(幻覚、妄想)

娘や息子等、家族の名前を大声で叫び続ける、呼び続ける。
(余談ですが、男性が妻の名を呼ぶ事はかなり多いですが、
女性が夫を呼ぶ事は圧倒的に少ないです・・・
医療の現場では皆うなずく、あるある現象ですね・・・)

そのような状態が夜間に起こる症状を、
夜間せん妄と言います。

徘徊は施設や病院、自宅あっても、
理由は似ている事が多いです。

探し物、トイレの場所が解らない、
せん妄等があげられます。

そして、すべてに共通する事として、
本人の心にどこかに、
・寂しさ、不安感、焦燥感、混乱
・自宅、特に施設であれば、居心地が悪い等の、
環境によるものも影響していると言われております。

では、この様な行動に対して、
私達どう対応すれば良いのでしょうか?

 

 

 

4.徘徊への対応策①

自宅で介護されている方にとっては、
安心して夜も眠れていないのではないでしょうか?

寝ている間に行動されてしまっては、
どうしてよいか解りませんよね。

徘徊の対応として、基本的には原因を知り、
それに対する対処法を考え、実施する事です。

しかし「故郷へ帰る、仕事に行く、捨てた物を探している、
母が食事を作って待っている」等、
幻覚や妄想も含め、説明してもなかなかうまくいきません。

しかし、たとえ訂正が出来なくても、
本人にこの場所は居心地の良い場所、
安心出来る場所、だと感じてもらう事が出来れば、
徘徊を軽減させる事が出来ます。

2
http://www.health.harvard.edu/blog/a-different-way-to-manage-anxiety-evidence-from-brain-science- 引用元:

 

4-1.否定しない、認める

自宅内を歩いていても、外出しようとしていても、
無理に引き止めようとすればするほど、
興奮、反発してしまうことがあります。

本人にとっては間違いのない正当な理由ですので。

まずは、否定せずに受容する事からスタートです。

「何かお探しですか?」「お手伝い出来ることはありますか?」
「どうしましたか?」「どこへ出かけますか?」
と声をかけてあげてください。

声をかける時には、
ユマニチュードといった手法があります。

ユマニチュード

フランス生まれの新しい認知症ケアの手法で、
「見る」「話しかける」「触れる」「立つ」
の4つの基本柱で接する手法です。

徘徊に関して私は、
「見る」「話しかける」「触れる」
の3つを実施して効果を得ております。

1.「見る」
同じ目線の高さ、20cmほどの近距離で、親しみをこめた視線
(笑顔)を送ります。

介護者がしゃがむ等して、まずは目線の高さを合わせます。
そして、視線を合わせる事が大切です。

私は最初20cmではなく、距離感は徐々に詰めていきました。

2.「話しかける」
返答の無い方であっても、ゆっくりと話しかける。

ゆっくりと声をかける事が、大切です。

3.「触れる」
ユマニチュードでも、触れることを推奨しています。

背中や肩、手のひら等、
人と人の触れ合いは理屈を超えて通じる感覚ですね。

*ユマニチュードの注意点として、
・腕などを突然「つかむ」
・視界に入りにくい「横や後ろ」から声をかける
等は避けて下さい。

引用元:
「暴言が消えた!魔法みたいな認知症ケア「ユマニチュード」って?

私も実際に行い、現在も実践中です。

普段、怒りっぽい患者さんでも、
刺激せずに、接する事ができました。

徘徊している方も、まずこの方法で接すると、
こちらの言葉かけに耳を傾けてくれて、

好印象を持ってもらえる→なぜか信用される
→話を聞いてくれる→なんとなく折り合いをつけてくれる
→「じゃ、帰るのは明日にするか」となって
→徘徊を明日にしてくれる。

といった様な現象が増えます。

全く同じ言葉をかけても、
「見る」「話しかける」「触れる」
のコマニチュードを取り入れるだけで、
大きな違いがあります。

あとは日々繰り返す事で、
色々なタイミングを自分なりに、
掴んでゆけます。

寂しい気持ちの患者さんにも、効果があり、
いつもと違う笑顔をみせてくれる等、
最初は半信半疑でしたが、
明らかな効果を実感できました。

ユマニチュードを実践することで、
認知症患者さんの心は和らぎ、
寂しいといった感覚、感情も徐々に薄れてゆくのでは
ないかと感じました。

そして、新たな信頼関係が生まれる事もあり、
この手法は介護者の為のもの、でもあると言えます。

しかし、基本はあくまでも、1人1人の介護者が、
本当に優しさや、相手を思って関わる事には
どんな手法も敵わないですよね。

では、コマニチュードを用いながら、
どの様に声をかけてゆけば良いでしょうか?

 

 

4-2.どんな言葉をかければ良いの?

徘徊をする本人には、
怒らず、関心をよそに向ける事も必要です。

どこかに行かなくてはならない、
と本人が思っている場合には、
「会社に行くのなら、持っていく靴や鞄を一緒に探しましょう」
「外は寒いので、何か暖かい服を一緒に探しましょう」
「食事の支度なら、お米や食材を一緒に準備しましょう」
と声をかけてみて下さい。

一緒に何かをしている間に、
関心が他に移っていくこともあります。

本人の関心が薄れ始めたら
「今日はもう遅くバスも電車のないので、
一泊していって下さい」といったように話題を変えてゆくと、
変化も見られます。

 

 

4-3.リズム、運動、ストレス、環境

・生活のリズム
基本的な生活を改善する事で、
徘徊など、認知症における症状が、
徐々に落ち着かれる事は多いです。

生活のリズムを作る為、朝は日光を浴びると、
身体のホルモンの調整が出来、
昼夜のバランスを正常に戻す助けとなります。

夜間せん妄の軽減や防止にもつながり、
介護の負担にも繋がります。

・適度な運動
適度な運動を行う事によって、
身体に刺激が加わり、生活リズムだけでなく
ストレスの発散や脳にも良い影響があります。

徘徊が治まる事もあり、
運動はそれだけで様々な効果が得られます。

散歩や体操等、無理のない範囲で行ってください。

・ストレス
運動だけでなく、
料理や掃除、洗濯なども一緒に行う事で、
自分にも役割がある、働いている、
と感じられて心の安定につながります。

また、普段から定期的に買い物や食事などをして、
一緒に外出することで、ストレスも軽減され、
徘徊の症状が治まることもあります。

・環境の調整
トイレまでの道順を壁に貼ったり、
トイレにトイレと書いた紙を貼る事でも、
混乱の防止につながります。

夜間の電気は全て消さずに、
ある程度の調整もしてみて下さい。

施設であっても、家具や枕、ベッドの位置等、
出来るだけ自宅に似た環境にすることで安心感も得られます。

 

 

 

5.徘徊への対応策②

様々な方法を試しても、
一時的な効果しか得られなかったり、
全く改善しないなど、なかなか難しい現状もあります。

むしろ自宅ではそういった事の方が多いでしょう。

家族の負担が雪だるま式に増えていく、
そんな状況を何度も目にした事があります。

娘や息子等、子供達や親戚が施設への入所を検討しても、
妻を施設に入れる事に対し、夫がそれを断固として認めず、
上手くいかない等…。

家族一人一人の思いや感情も考慮しなければならない、
そんな現状もあります。

では、どうすれば良いのでしょうか?

ネットワークやサービスの利用

・市の地域支援センター
・認知症の電話相談窓口
・家族会
(家族同士の交流会、情報交換、情報提供や電話相談などを行っています)
・徘徊SOSネットワーク
・保健所、保険センター
等、様々あります。

結局どこに相談すればよいの?か解らなくても、
*市区町村の窓口*
地区町村の窓口に行って下さい。
関係部署や関係機関を教えてくれます。

他にも、
警察署を中心に全国的に広がっている
徘徊SOSネットワークを利用することも一つの方法です。
参考:http://www.silver-soken.com/sos-net/html/sosnetwork.html

さらにGPSや部屋にカメラを取り付けたり、
センサーによって、本人が家を出るとアラームが鳴る等、
様々なサービスや方法はあります。

ネット等でも介護負担軽減の方法は出てきますが、
まずは、地区町村の窓口に行き人と会って、
相談する事をお勧めいたします。

 

 

 

6.まとめ

認知症(徘徊)にどう向きあって行けば良いのか?
時折「ハッ」として考えさせられます。

認知症は私達に何を伝えたいのだろう?
何を訴えているのだろう?

施設や病院等で勤務していると、
徘徊している姿を目にしても、
それがいつもの風景のようです。

私達は深く考える事をあえて、
していないのかもしれません。

答えはありませんが、
多くの方を見てきた中で、
認知症の方も、一生懸命に介護をする方にも、
何か寂しさを見せる、感じる、事があります。

愛情のかけ方も、受け取り方も、
実はちゃんと知っているのに、
少しずつ忘れかけてきてるからかな?

Affection Baby Sleeping Hand Child Playing Child

http://maxpixel.freegreatpicture.com/Affection-Baby-Sleeping-Hand-Child-Playing-Child-1856370 引用元:

 

 


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