ドライマウスが高齢者に及ぼす影響

Giuliamar / Pixabay

ドライマウス、
広告等、メディアでも
時折聞かれる言葉かもしれません。

「ドライアイ」程、
有名ではないかもしれませんね。

すぐに命に関わるような「病気」
ではないですが、軽視してはいけません。

ドライマウスは、
人体に様々な弊害を起こしてしまいます。

その症状の裏に大きな病気が潜んでいる事もあり、
放置してしまうと、取り返しのつかない状況、
となってしまう事もあります。

ドライマウスの詳しい説明と、
高齢者に及ぼす影響も踏まえて
ご説明してゆきます。

 

 

 

1.口の構造と役割

ドライ(渇く)とマウス(口)
文字の通り「口が渇く」と、大まかに考えて良いです。

そもそも、口(口腔)には、
どのような働きがあるのでしょうか?

口の正常な働きから考えてゆきましょう。

 

11口の構造

口には、
話す、呼吸をする、食べる、吸う、表情を作る、
等、様々な機能があります。

口は、舌、歯、唇、口蓋(こうがい)、頬、
等で形成されています。

歯は成人で約28本あり、
親知らず入れると34本となります。

それらの機能を使い、
巧みに連携し合っております。

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図1.引用元:http://yonemura-dental.seesaa.net/

 

12口の役割 (歯、舌、頬、唇)

口は消化器官の入り口であり、粘膜で覆われています。

食べ物を摂取してかみ砕きます(咀嚼)

その過程には、
粉砕、すり潰す、唾液との混合、食塊の形成があり、
消化酵素を含む唾液が唾液腺から分泌され、
分解をはじめます。 

消化器管:口から肛門まで、食物の通り道を言います。

*同カテゴリー内、
「消化、吸収から排便までのメカニズム」
も合わせて読んで頂くと今後の説明の、参考となります。 

歯は、
噛むことで食物の栄養を吸収しやすくし、
消化器官への負担も軽くします。

歯がある事で歯ごたえも感じられて、
美味しさも増します。

硬い物等、異物も歯で感じ取ることが出来、
人体を防御しています。

歯並びが綺麗であると、発音もはっきりとし、
顔の輪郭や表情にも大きな違いが出ます。

さらには、
力の入れ具合、身体の姿勢等、
全身のバランスにも影響してしまう大切な
「臓器」です。

よく噛む事によって、
消化促進、虫歯や歯周の予防、ダイエット作用、
認知症の予防も期待できます。

舌は、
味を感じるだけでなく、
食物をかみ砕き、飲み込むまでの過程で、
とても重要な働きを担っております。

口に入れた食物は、舌で受け取り、
甘い、辛い、苦い、しょっぱい、硬い、柔らかい等、
を瞬間的に感じ取ります。

歯や舌によっても、身体に害のあるものを感じ取り、
防御しています。

咀嚼中は咀嚼がしやすいように、
食物が口の奥に来ないよう、
舌で歯の間に移動させる働きをします。

充分に飲み込める形となってから、
初めて咽頭へ送り、飲み込みます。

飲み込む際も舌の強い力が必要となります。

舌には複数の神経線維が混ざり、
触覚、痛覚、味覚等の敏感な情報を脳に伝えています。

「舌を噛んで自害」なんて事も聞くくらいに、
神経や血管が密集した、大切な部分なのです。

又、舌に対して「二枚舌」「舌が肥える」「舌を出す」
等、舌を使った様々な表現もありますね。

頬は
頬には唾液腺のひとつ耳下腺があります。

食物を食べると、唾液腺から唾液が放出されます。

頬の筋肉が機能しないと、
食べ物や水分の飲み込みが悪くなり、
会話にも影響してしまいます。 

唇は、
飲食をした時に、
口から食物が出ないようにする働きがありますが、
他にも様々な働きをしております。

噛み合わせの安定、発声、呼吸の補助、
食物の判断、表情を作る。

又、「唇を盗む」等の言葉もあり、
人と人とを繋げる上でも親密性や性的な面も踏まえ、
様々な効果も発揮しています。

 

13唾液の役割

 唾液、
これからドライマウスを説明する上で、
「唾液」との関係が非常に重要となります。

唾液が分泌される部位として、
・三大唾液腺 →(耳下腺、顎下腺、舌下腺)
小唾液腺 →(口唇腺、頬腺、口蓋腺等)
に大別されています。

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図2.引用元:http://www.yoneyama-dc.com/pg264.html

唾液はそこから分泌される体液の事を言います。

1日で分泌される量として、
1リットル程と言われており、
その60%は顎下腺からの分泌です。 

唾液の主な働きとして、

・消化酵素作用
唾液に含まれる消化酵素によって、
食べ物の消化を補助します。

よく噛む事によって、分泌量も増すので、
消化器官の負担を和らげる事が出来ます。 

咀嚼によって、消化や栄養の吸収も助けます。 

・再石灰化作用
歯は食事のたびに溶かされて、
ミネラルが流出してしまいます。

唾液の効果によって、
失われたミネラル成分を戻す、
再石灰化が起こります。

・洗浄作用
食後は口の中が酸性となり、虫歯になりやすい状態です。

しかし、唾液の働きによって、酸性→中性に戻し、
虫歯を食い止めます。

さらに、粘膜や歯の表面に唾液が覆う事により、
食物が歯や粘膜に付着するのを防ぎます。

・潤滑作
舌や頬等の滑りを良くして、発声を助けます。

粘膜の表面を唾液が覆って潤いをもたせることにより、
咀嚼・嚥下・発声を容易にします。

・粘膜保護作用
粘膜は傷つきやすく、熱い、冷たい、
硬い等の刺激から、守ってくれます。

唾液の成分であるムチンによって、
各種の刺激から粘膜を保護します。

ムチン:粘膜から分泌される粘液の主成分です。

粘りけを持っており、粘膜の潤いを保ち、
細菌が侵入するのを防ぎます。

山芋、オクラ、なめこ等にも含まれております。 

・殺菌作用
口には昼夜問わず沢山の菌が入ってきます。

唾液の成分にはそれらの菌を殺菌する働きもあります。

発ガン性物質を抑える働きもあると言われております。

 

 

 

2.ドライマウスってどんな病気?

口の機能や、唾液の働きを理解して頂いた上で、
「ドライマウス」についてご説明してゆきます。| 

冒頭でもご説明しましたが、唾液の分泌量が低下して、
口腔内の乾燥等、様々な症状を引き起こします。

現在日本では800万人がドライマウスと推定されており、
予備軍が3000万人とも言われております。

ドライマウス「=口腔乾燥症」と言います。

 

21症状、原因

ドライマウスの症状

・水分量の少ない食べ物、クッキー、パン、クラッカー等
の食品が飲み込めなくなってしまう。

・乾燥によって会話がしにくい。

・唇や口腔内の乾燥があり、口や喉が渇く。

・口の中がネバネバする。

・免疫の低下によって、虫歯になりやすくなり、風邪をひきやすくなる。

・入れ歯が合わなくなる。

・口臭が強くなり、口内炎も増える。

・唇や口腔内のただれ、ひび割れ、出血がある等、様々な症状があります。

口の不快感から夜間に眠れなくなる等、
精神的にも大きな苦痛が生じてしまう病気です。

軽症=口のネバつき、飲み込みづらさ、口臭、虫歯等
重症=舌のひび割れ、舌の痛みで食事が食べられない、

強い口臭、発音障害等

ドライマウスの原因

・口呼吸
呼吸は通常、鼻で行いますが、
現代はスマホ、パソコン等の姿勢が影響し、
うつむく等、顔や顎が前に突き出るような姿勢を、
多くとってしまいがちです。 

姿勢が悪いと口呼吸になりがちです。

鼻の湿った空洞を通らずに、
口からの呼吸を繰り返す事によって、
ドライマウスだけでなく、風邪もひきやすくなります。 

・嚙む力の低下
現代は柔らかい食事が多く、口、顎、舌、頬等の、
筋肉が衰えて、唾液が減少してしまいます。

・ストレス
現代人は忙しく、リラックスしている時間より、
緊張している時間の方が多いのではないでしょうか?
リラックスしていれば唾液は分泌されやすいです。

現代病の一つです。

・薬の副作用
アレルギーの治療に使われる抗ヒスタミン薬、
精神薬、睡眠薬、利尿剤、鎮痛薬、降圧薬等、
薬を飲み始めたら、明らかに口が渇く事もあります。

様々な薬の副作用によってもドライマウスは起こります。

・シューグレン症候群
自己免疫疾患の一つで難病として指定をされています。

原因は不明ですし、完治の方法も今の所ありません。

唾液、ドライアイ等、粘膜の乾燥が、
シェーグレン症候群の主な特徴です。

参考:「難病情報センター」にも詳しく記載されております。
http://www.nanbyou.or.jp/entry/111

自己免疫疾患:身体には有害な細菌やウィルスを攻撃する機能、
(免疫機能)がありますが、その仕組みの異常により、
自分自身の身体(自己)を攻撃してしまう病気です。 

・加齢による唾液分泌量の低下
歳を重ねるにつれて、
どうしても口、顎の筋肉は衰えてゆきます。

噛む力が衰え、分泌量の低下があります。

さらに筋力の低下から、顎や顔が前へ突き出て、
鼻呼吸がスムーズにできなくなります。

それによりか口呼吸へ移行してしまいます。

そして高齢者は薬を内服している事が多く、
その副作用からもドライマウスにかかりやすい、と言えます。

{以前は高齢者に多かったドライマウスですが、
最近では20~30代の若い年齢層に増えております}

加齢による影響だけではなく、
ストレス、食事等、様々な環境が作り出している、
現代病と言えます。

 

22検査、診断

まず、2-1で説明した症状について当てはまるか?
も診断(問診)のポイントとなります。

具体的な検査としては、
1、吐唾法
安静の状態で自然に出てくる唾液を採取し、
分泌量を測定します。 

2、ワッテ法
脱脂綿を口の中に入れて、
脱脂綿が吸い取った唾液の量を測定します。 

3、ガムテスト
ガムを5~10分間噛んで、
分泌された唾液の量を測定します。
唾液の分泌量によってドライマウスと診断されます。

4、サクソンテスト
ガーゼを口の中に入れて、2分間ガーゼを噛みます。
ガーゼが吸い取った量の唾液を測定します。

他に
造影検査、血液検査、培養の検査等があります。

口唇腺生検は、
唾液腺を一部採取して行う病理組織検査です。

最近ではCT、MRIでの検査も実施されております。

唾液や血液検査も、ドライマウスだけでなく、
シューグレン症候群や糖尿病を疑ったり、
カンジタ菌の可能性を調べる等、
様々な疾患を視野において検査を行います。

 

23治療と予防法

ドライマウスの原因で上げたものに対し、
治療、予防法を説明してゆきます

 ・口呼吸
パソコンやスマホでの、姿勢の改善です。
そのような機器を扱うときは、
姿勢を意識して下さい。

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引用元:「パソコンを使うときの正しい姿勢」をご紹介します
https://121ware.com/navigate/application/prevent/useful/20140304/index02.html

・「パ」「タ」「カ」「ラ」体操もあり
食べ物を喉まで運ぶ一連の動作が鍛えられます。

口周り、舌の筋力を改善させてくれる効果があります。

食前に大きな声で 「パ」「タ」「カ」「ラ」と、
発声するだけで効果があります。

実際に私の職場でも、
パタカラ体操を取り入れておりました。

飲み込む筋力や、唾液の分泌量だけでなく、
日頃の表情にも笑顔が多くなりました。

是非家族や職員も一緒に行って下さい。

又、歯並びも噛み合わせによって、
口呼吸になってしまいます。

歯科での治療や相談をして下さい。

・嚙む力の低下
柔らかい食事が多く、口の筋肉が衰え、
唾液が減少してしまいます。

噛みごたえのある食品を摂取する。
(乾物、煎餅、野菜、肉、魚、海藻等)

例え柔らかい食品であったとしても、
いつもより噛む回数を多く意識して下さい。

・ストレス
出来るだけ気分転換をする。

入浴したり、アロマを嗅いだり、スポーツ等、
自分なりのストレス発散を行って下さい。

リラックス=唾液は分泌されやすいです。

・薬の副作用
ガム等を噛む事で、ある程度は改善できます。

しかし根本は副作用である為、
現在の症状から医師と内服の調整が必要です。

・シューグレン症候群
原因は解明されていないです。

症状に対して、一つ一つ対応しているのが状況です。

人工唾液等で、症状もかなり軽減される方もおります。

 又、アルコール、コーヒーの飲みすぎ、
ニコチンにも利尿作用がありますので、
タバコもダメです。

 

 

 

3.高齢者におけるドライマウスの影響

高齢者は加齢によって、様々な影響をうけます。

勿論、口腔内の変化も見られ、
ドライマウスはその変化の中でも、
かなりかかりやすい病気です。

・加齢による唾液分泌量の低下

1歳を重ねるにつれて、
どうしても口、顎の筋肉は衰えてゆきます。

やはりお勧めは、
「パ」「タ」「カ」「ラ」体操で、
さらに唾液腺のマッサージ等も効果があります。

マッサージは2も参考にして頂き、
唾液腺の部分に力入れずに指で軽くなでる様に、
優しくおこなって下さい。

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図3.
引用元:http://www.seodental.jp/category/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E/

2年齢とともに減少する体内の水分量が低下します。

人間の身体の水分は、
胎児で体重の90%、子供では70%、
成人で60%~65%、老人は50%~55%、
となっております。

唾液の分泌に関しても、
15歳がピークと言われております。 20代では1日に約1リットル~1.5リットルの分泌、
30代を境として、徐々に分泌量が減少します。

70代を超えると、ピーク時の
3分の1にまで減少してしまいます。

「30代から口の老いが始まる」とも言われております。

これには、定期的な水分摂取や口の運動だけでなく、
最近さらに進化している、「唾液分泌補助」の為の、
ペースト状の補助剤や、人工唾液の利用も考慮して下さい。

3自分の歯を失った事で、入れ歯になってしまう。
口や顎の筋力変化によって入れ歯も合わなくなり、
口腔内の動きが制限されてしまいます。

唾液の低下を招いてしまう事もあります。

本人に合った入れ歯の作成が必要です。

ペースト状の補助剤や、人工唾液の使用。

 

 

 

 

4.まとめ

これまでドライマウスの説明や改善策を、
お話しいたしました。

生活、ストレス、薬の副作用、疾患等に加え、
さらに加齢という避けられない状態が重なります。

改善策を色々と試し、著しい改善が見られた方、
なかなか効果の表れない方もおります。

そして長い期間、症状と付き合っている方もおります。

しかし受診先を変えただけでも、
かなり症状が楽になった等、
それぞれ、個々に合った治療法や、
医師との相性もあると思います。

自分なりに情報を探ってみる事も必要です。

食事は、ただ単に口から栄養が補給されれば良い、とは思えません。

家族や友人と食事をして「美味しい」「楽しい」
と感じられる事がとても大切です。

色々な状況がありますが、
「美味しい」と感じてもらったり、
「楽しいと」感じ、リラックスして食べられる事、
それが重度のドライマウスによって、
その感覚を、徐々に失ってしまう方もおりました。

周りの楽しい雰囲気や、懐かしい食材で、
その「ぬくもり」を思いだす方もおります。

それを目標の一つとし、歩んで行く事も、
必要と感じられます。

 

 

 

 

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