高齢者の便秘の原因と対策

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便秘に苦しんでいる人って、
いったいどれくらいいるのでしょうか?

便秘は様々な疾患の引き金となりますし、
心(精神的)にも大きな影響を及ぼしてしまいます。

現代人は便秘になりやすい生活習慣です。

それが高齢ともなれば色々な要因が重なり、
リスクはさらに高まります。

自宅、施設、病院等、
様々な場で生活をされている高齢者の方がおります。

そして、
そのお手伝いをされている多くの方がいます。

便秘や腸の改善によって、
本人だけでなく介護する側にも、
肉体的、精神的な負担が軽減し笑顔の時間が増えます。

それだけ排泄週間は人間にとって重要な事の一つです。

ここでは現場での知識や経験も踏まえ、
便秘の改善に向けてご説明してゆきます。

 

 

 

 

 

 

1.便秘とは?

「便秘って?そもそもどうなったら便秘なの?」
と、思う方もいるかもしれません。

そうなんです。

「便秘の定義」…はっきりとはありません。

日本内科学会や日本消化器学会を参照すると、
・一般的に3~4日便が出ない状態、便が出ても残便感がある状態。
・排便感覚が不規則で便の水分量に違いがある状態。
・毎日便が出ていても、一回の排便量が少ない状態。
となっており、明確ではありません。

では便秘ではない状態とは?

人によって様々ですが、
大切な感覚としては2~3日に一度の排便だとしても、
本人がスッキリ感を得られる事が目安となります。

しかし理想は、
毎日食事をしていれば、
1日1回のスッキリとした排便が好ましいです。

また、
1日に3食食べるのであれば、
1日に3回のすっきりとした排便がある事がベストという意見もあります。

 

便秘の種類

便秘にも種類があり大きく分けると3種類となります。

 

1、弛緩性便秘 (しかんせいべんぴ)

大腸の動きが低下して便秘になります。
女性に多く日本人の便秘原因として最も多いと言われております。
運動不足による筋力の低下や、
高齢者であれば加齢とともに内臓が垂れ下がり、
たれさがった腸のゆるみから起きています。

 

2、直腸性便秘(ちょくちょうせいべんぴ)

便意(便がしたくなってきた)という感覚が鈍ってしまいます。
仕事や寝たきりにより、
便意があっても我慢し過ぎてしまったり、
下剤や浣腸に頼り過ぎてしまう事から起きています。
また内服している薬の副作用によっても起こしてしまいます。

 

3、痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ)

主にストレスや生活習慣の影響によって起こります。
特徴として便秘と下痢が交互に起こる。
硬くコロコロとした便になりやすく便が出てもスッキリ感がありません。

*消化器官の解剖図や仕組み、メカニズムはこのカテゴリー欄「看護の基本」の
「消化、吸収から排便までのメカニズム」をご参考にして頂くと、
さらに解りやすくなっております。
http://kaigojoho.com/defecation-mechanism

 

 

 

2、便秘の原因

では次に主な便秘の原因を挙げます。

高齢者でなくとも現代人は便秘傾向であり、
老若男女問わずにあてはまります。

主な便秘の原因とし次の6項目が挙げられます。

1、生活のリズム  4、ストレス

2、食事      5、運動 

3、水分      6、薬の副作用

何らかの原因で上記のバランスが乱れると、
便秘のリスクが高まります。

ではなぜ高齢者が便秘になりやすいのでしょうか?
統計的には65歳位から便秘傾向となっております。

便秘の原因として上記で記載した事と同じですが、
高齢者ならではの特徴があります。

1~6までを高齢者の特徴を捉えながらご説明いたします。

 

 

 

 

3.便秘の対策

31 生活のリズム

年齢を重ねるにつれて夜間に何度も目が覚めてしまったり、
早朝に目が覚めてしまうと深い睡眠が減ってゆく傾向となります。

加齢による血圧、体温、特にホルモン(メラトニン
バランスの変化等が影響しております。

メラトニン=体内時計に働きかけ覚醒と睡眠を調節します。
自然な眠りを誘う作用があり「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。

 

{改善策}
・メラトニンの分泌量は、目から入る光の量によって変化する為、
夜は部屋を暗くする、朝目覚めたらカーテンを開ける等して、
自然のリズムに合わせた光の調節をして下さい。

・サプリメントでメラトニンを直接摂取する方法もあります。

・起床したらストレッチや散歩等、適度な運動を心がける事が大切です。
身体をゆっくりと目覚めさせて下さい。

 

32 食事

腸の運動促進を促す食物繊維が改善の一つとなります。

しかし高齢者は、
噛む力の低下、歯の損失、嚥下機能の低下もあります。

そのため、
硬い物よりも柔らかいものを好む様になり、
食物繊維を多く含む食べ物を避けがちとなります。

 

{改善策}
食物繊維の多い食品として、
ゴボウ、納豆、おから、小豆、大豆、海苔等があり、
食べやすいように加工して摂取する事も必要となります。

サプリによるサイリウム(オオバコ)は効果的であり、
副作用もありません。

注意して欲しい事として
高齢者は食物繊維を大量に摂取しても、
もともと腸の運動が低下しています。
人によって様々ですが腸の刺激効果が期待できない事があり、
かえって便秘になってしまうケースもあります。

そのため、
高齢者にお勧めしたいのが水溶性の食物繊維です。

名の通り水に溶けやすい性質です。

水溶性食物繊維の効果として、
水に溶けて水分を含み便をやわらかくする役割があります。

運動が低下している腸でも、
スムーズな排泄効果を期待出来ます。

それに対して不溶性食物繊維は、
水に溶けず便をカサ増して腸のぜん動運動を促進します。

不溶性食物繊維はどの食材にも比較的多く含まれており、
水溶性食物繊維は含まれる量が少ないです。

水溶性食物繊維が多い食材として、
オオバコ、エシャロット(ユリ科ネギ属多年草)
ラッキョウ、ニンニク、納豆、ゆず(果皮)
海藻類等であり、ネバネバとした物が特徴です。

水溶性と不溶性の食物繊維を両方含んでいるのが、
じゃがいもごぼう、納豆、プルーンキウイです。

なるべく本人の好みに合わせながら提供して下さい。

 

 

 

33 水分

人は特に活動しなくとも
不感蒸泄によって1日に約900mlの水分が身体から出ています。

尿や便等も含め、
トータルすると1日2000ml程の水分が失われております。
不感蒸泄=無自覚のまま皮膚や呼吸から蒸散する水分です。
失われた水分補給の為、
食事だけでなく飲み物からも水分を摂取しなければなりません。

飲み物として1日に、
1500ml~2000mlが必要だと言われております。

特に高齢者は感覚機能が低下している為、
喉の渇きを訴えないことが多いです。

皮膚や唇の乾燥、表情、
いつもと食い違った会話内容等からも脱水の観察が出来ます。

さらに、
夜中トイレに起きるのが面倒という理由や、
失禁を恐れてしまい自ら水分を控えようとする傾向にもあります。

水分不足は便秘傾向となるだけでなく、
脱水症や脳梗塞や心筋梗塞といったリスクが非常に高まります。

 

{改善策}
・決まった時間に声をかけて水分を促すことでリズムが作りやすくなる。

・水分の多く含んだ水分ゼリーや好みに合わせた飲み物も良いでしょう。

・お菓子等と共に水分を提供し、その時間を楽しみに感じられる工夫も必要です。

・水分の温度も氷を入れたり温かくしたりと、好みに合わせてみて下さい。

 

34 ストレス

交感神経=活動や緊張時、ストレスを感じている時に働きます。
副交感神=休息やリラックスしている時、眠っている時に働きます。

ストレスは腸の交感神経を優位にしてしまい、
リラックスしている時は副交感神経が優位となります。

腸の運動をコントロールしているのは副交感神経である為、
ストレスにより交感神経が優位となれば便秘になりやすいです。

身体の中で最もストレスの影響を受けやすいのは、
腸と言われております。

高齢者は多くの不安を感じている事があります。

特に入院等によって、
新しい環境へ移る事はとてもストレスです。

さらに高齢者は環境に適応する能力が低下しています。

心配、寂しい、不安といった感情からも、
想像以上にストレスを感じています。

 

{改善策}
・ゆっくりと話を聞き、リラックスできる時間を持つ。

・好きな音楽やTVをかける

・出来る範囲で本人の趣味等を提供する

・身体やお腹のマッサージをしたり、お腹を温める。

(介助者が身体に触れるだけでも安心感を得られます)

・自宅と同じ配置で家具を設置する等、出来るだけ安心した環境を整える事が大切です。

*便秘を改善するだけでも腸内と脳内のセロトニン(幸せホルモン)量が、
変化、増量し、気分が前向きとなる傾向にあります。

 

 

35 運動不足

高齢者は身体の痛み、疲れやすさ、
さらに独居生活であれば日常の刺激もかなり少ないです。

また、

高齢者独特の鬱的な変化もあります。

それらにより家にこもりがちとなり運動不足を招きます。

特に入院してしまうと、
身の回りの事をお世話してくれたりとある程度の援助もあります。

入院した事がきっかけとなり、
身体を動かす事が面倒となる高齢者もおります。

身体の活動が低下してしまうと、
全身の筋力低下を招いてしまいます。

特に腹筋(下腹部)は便を排泄するときに重要な役割を果たします。

腹筋の力が弱いと、
十分な腹圧をかけられない為、
スムーズな排便が難しくなります。

寝たきりになってしまうと自力での運動は限られてしまい、
介助者の援助が必要不可欠となります。

さらに寝たきりでは自宅、病院、施設であろうと、
介助する側のリズムに合わせなければならない事もあります。

排便、排尿がしたいと思っても誰もおらず、
我慢してしまったり「なるべく迷惑を掛けたくない」等の思いもあります。

それによって排便リズムの変化や、
様々な精神的葛藤から新たなストレスが生じて、
悪循環になってしまうことがありあます。

 

{改善策}
・寝たきりであっても施設や病院であれば専門職員のリハビリを依頼したり、

レクリエーションの参加も効果が見られています。

・個々にあった排泄リズムを把握して、なるべくその時間に合わせて援助、声をかけます。

・本人の出来る範囲の活動を見極め必要な援助を行うようにします。

・自宅でも訪問看護の力を活用すると良いでしょう。

・地域の繋がりも大切で声を掛け合うことにより一緒に体操をしたり、外に出る機会も増えております。

・歩くだけでも腸の動きがよくなり、腹筋も鍛えられます。

 

36 薬の副作用

高齢者は多くの疾患を抱えている事が多く、
その疾患に比例した量の薬を内服している事があります。

薬の種類によっては副作用で便秘なってしまう事があります。

{改善策}
・1~5までに説明した改善策を継続して下さい。

・有効なのは乳酸菌、オリゴ糖、ヨーグルト、場合によっては整腸剤や下剤が必要となってきます。

・医師や看護師と相談しながら、排便状況、疾患の状態、内服薬の量に合わせながら、
徐々に整腸剤や下剤を減らしてゆきます。

 

 

 

 

4.まとめ

便秘は多くの方に見られる悩みでもありますが、
高齢者であればなおさらそのリスクが高まります。

会話の出来ない方、
感じている症状を上手く表現できない方、
様々な疾患や悩みを抱えた方がおります。

現場は本当に忙しく疲労困憊の毎日かもしれません。

しかし、
日頃からのちょっとしたコミニケーションや、
身体的な観察を意識すれば体調面や精神面等、
小さな変化に気がつくはずです。

本人ではなく、
私達にしか気が付けない事があります。

高齢の方、入院されている方、家族、そして私達、
皆で多くの優しさや笑顔を感じましょう。

 

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