高齢者における脱水症の危険性

jasongillman / Pixabay

一年を通して「高齢者の脱水」という言葉を耳にします。

特に気温の高い季節になるとニュース等でも、
多く聞かれる様になります。

しかし、脱水症の症状や、種類、
そして命の危険性にまで、目を向ける事は少ないと感じます。

「水分をしっかり摂れば大丈夫じゃない?」等、
医療者であっても、曖昧な返答をする事があります。

ここでは、
脱水症の定義から、種類や症状、
そして高齢者ならではの危険性をご説明してゆきます。

 

 

 

1.脱水症とは

まず初めに、脱水症って?
水が飲めなくなって起こる症状だっけ?
と、思ってしまうかもしれません。

しかし、かなり奥の深い症状です。

一言で表すのならば、
「体内の水分(体液)が不足した状態を言います」

体液には水分のほかに、
電解質(イオン)ナトリウムNa ・カリウムK ・クロールCl
         ・カルシウムCa ・マグネシウムMg 等があります。

これらをまとめて5大栄養素と呼ばれております。

どこかで聞いたことがあるかもしれませんね。

身体の水分(体液)にはこれらの電解質が含まれているので、
単に水分が減ってしまった、といった症状のみではなく、
電解質の欠乏のために起こる症状もあらわれます。

 

ナトリウムNa

身体の水分バランスを保ち、
神経や筋肉が正常に働く助けをします。

汗や尿等とともに身体から排泄され、腎臓で調節されます。

実は、ナトリウムと塩は違いがあり、
食塩中(塩)に含まれる一部がナトリウムなのです。

食塩中に含まれるナトリウム量は全体の40%弱くらいです。

単純に言ってしまうと、塩分を摂取すればナトリウムも増えますね。
梅干しや塩辛等、しょっぱい食品に多く含まれています。

特に疾患がなければ、
一日の摂取量は食塩10g以下=ナトリウムでは4g以下となっております
(食塩10gは小さじ1と3分の2です)

 

・カリウムイオンK 

細胞、筋肉、神経が正常に働く為に必要です。

カリウムの変化によって、
不整脈や心臓の機能に様々な変化を起こします。

消化管、尿、汗からも排出さ、
腎臓によって調整されます。

カリウムは果物、野菜、海藻などに多く含まれています。

多く摂取しすぎても、腎臓に機能に問題がなければ、
調整されて尿から排出されます。

 

・カルシウムCa 

 骨や歯の材料であり、骨にしっかり貯蔵されております。

神経や筋肉の興奮性の調節、血液凝固因子の活性、
ホルモン分泌、神経伝達物質、等
生命活動の中心的役割をしております。

小魚、豆腐、青菜、乳製品に多く含まれています。

 

・クロールCl

他の電解質と相互関係にあり、
身体の水分バランスを調整しています。

腎臓と密接な関わりがあります。

梅干し、味噌、醤油等の多く含まれています。

 

・マグネシウムMg

ほぼ骨の中にあり、骨や歯を作るのになくてはなりません。

神経や筋肉を正常に保つために働きます。

海藻類、大豆、豆腐、キナコ等に多くふくまれております。

こうしてみると、
電解質の役目として神経や筋肉、水分バランスの調整等、
身体の各部位~身体全体のバランスと保っています。

腎臓も深く関わり、必要不可欠な役割をしています。

 

 

2.脱水症の種類、症状、予防策

脱水症にも種類があり、症状も様々です。

ここでは脱水症の種類や症状、
そして予防策について、説明してゆきます。

 

2-1.脱水症の種類と症状

①高張性脱水とは
電解質よりも、身体の水分が多く失われてしまいます。

原因
多量の発汗、単純に水分の摂取量が少ない等、
自分で適度な水分摂取の出来ない、乳幼児や高齢者に多いです。

症状
発熱や著しい喉の渇き、口腔内に乾燥、
意識はあるが、混濁(ぼんやり)している事もあります。

 

②等張性脱水とは
電解質と水分が同じくらいの割合で失われます。

原因
腎臓病、出血、何らかの原因によっての下痢や嘔吐等、
体液を一気に排泄するときに生じやすいです。

症状
めまい、立ちくらみ、喉の渇きがあり、
喉の渇きによって水を沢山(電解質に入っていない水分を飲んでしまう)
飲んでしまい、それによって、電解質が薄まってしまう。
それが原因となり低張性脱水になってしまいます。
等張性脱水から低張性脱水になる事も多いです

 

③低張性脱水とは
水分よりも電解質が多く失われます。

原因
長時間の運動等で、多量の発汗を伴った時、
発熱、発汗、下痢、嘔吐等があった時、
電解質の少ないお茶や水のみを補充する事で起きます。

症状
発熱や喉の渇きはなく、口腔内など乾燥もありません。
初期では自覚症状も少なく、進行するによって、
全身の倦怠感眠気、手足の冷え、脈拍の増加があります。

 

④高齢者 隠れ脱水症
「隠れ脱水症」聞きなれない言葉かもしれません。

高齢者は感覚機能の低下があり、
喉の渇きや、熱さ、寒さに対しても、
感じにくくなっている事があります。

さらに周囲から観察しても、
はっきりとした症状が解りづらいです。

その事より、本人も周囲も気がつかないうちに、
脱水の一歩手前で初めて症状に気が付く、
又、気が付いた時にはすでに脱水症になっていた。
という状態が「隠れ脱水症」です。

観察点として、
・食欲の低下      ・なんだか何時もより元気がない
・頭痛を訴える     ・最近いつもより眠っている
・痰の量が減った    ・トイレに行く回数が減った
・便秘になった     ・手足の先が冷たく青白い
・口の中が乾いている  ・皮膚がカサカサ乾燥している
・目がくぼんでいる   ・暑いのに汗をかかない
・少し痩せた感じがする等

日頃からの観察でいち早く気が付く事もできます。

 

 

2-2.表や図で危険度を知ろう

下記に全身の水分の損失(%)と、それによる症状を記載いたしました。

1% 多量の汗、口喝
2%

 

 

3%

めまい、吐き気、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、尿量減少

血液濃度上昇、血液濃縮、食欲減退、運動機能低下
強い喉の渇き、汗が出なくなる、食欲減退

 

4%

 

全身脱力感、動きの鈍り、皮膚の紅潮化、疲労感、感情鈍麻、

感情の不安定(精神不安定)、無関心、めまい、頭痛

6% 手足の振戦、ふらつき、混迷、頭痛、体温上昇、脈拍・呼吸の上昇
8% 幻覚・呼吸困難、めまい、チアノーゼ、言語不明瞭、精神錯乱
10~12% 筋痙攣、失神、興奮状態、不眠、循環の不全、

血液減少、腎機能不の全、生命の危機が始まる

15~17% 皮膚の著しい乾燥、飲み込みが困難となる、目がくぼむ、生命の危機

聴力損失、皮膚の感覚鈍くなる、眼瞼硬直

18% 皮膚のひび割れ、尿生成の停止、意識消失
20% 生命の危機、死亡

 

下記の図は体重の減少から見た、症状を表しております。

1

引用元:http://healthil.jp/13393

 

 

 

3.高齢者は何故脱水症になりやすいのか

ではここから、なぜ高齢者は脱水になりやすいのでしょうか?

1、筋肉の量が少ない

え?と思うかもしれません。

人間の身体の水分は、
胎児で体重の90%、子供では70%、
成人で60%~65%、老人は50%~55%、となっております。

そして、その水分は筋肉に沢山貯蔵されています。

筋肉には水分が沢山含まれており、
水分の貯蔵庫と考えて下さい。

筋肉の70%~80%は水分と言われております。

筋肉の量が少ないという事は、水分の貯蔵出来る量も少ない、
何かがあっても予備が少ないので、対応が出来ないという事になるのです。

 

 

2.感覚機能が鈍くなってしまう

「高齢者の隠れ脱水」でもご説明しましたが、
「喉が渇く」という感覚が老化によって鈍くなってしまいます。

食事に関してもそれが影響し、空腹感を感じなくなったり、
認知症が重度ともなれば、食事自体を食べ物として、
認識できなくなってしまう事もあります。

水分だけでなく、食事からの水分や栄養の摂取が徐々に、
低下してしまいます。

 

 

3.腎臓の機能低下がある

腎臓の機能が低下する事によって、
老廃物(尿)を排出する力が一回では足りなくなり、
回数を増やして排出しています。

その為、尿の回数が増えてしまい、
老廃物を排出する為により多くの水分を使って、
排泄作業を頑張っているのです。

その事からも水分がさらに奪われやすくなってしまいます。

さらには、夜中のトイレに起きたくない、
又、介護者や家族に迷惑をかけたくない等、
の理由で自ら水分を控えてしまう事があります。

 

 

4.薬物の影響

高齢者は高血圧の薬を飲んでいる事が多く、
利尿作用のある薬や、利尿剤と併用する等、水分が失われやすくなっています。

利尿剤:尿量を増やして体内の水分を排泄させます

 

 

 

5.疾患による影響

代表的な疾患を挙げると糖尿病があります。

糖尿病の方は、血液中の糖分が多くなり、
尿にも糖が排泄されるようになってしまいます。

このため尿の浸透圧(濃度の高い方から低い方へ移動する事)
の関係で尿量が増え、尿の回数が多くなります。

尿の量が増えると、水分補給の為に喉が渇きます。

喉が渇いて水分を多く取るようになり、
更に尿の量、回数とも増えることになります。

悪循環に陥ってしまうのです。

以上のことから高齢者は脱水症になりやすいのです。

 

 

4.まとめ

高齢者は老化によって、
様々な要因から脱水症の危険性が増します。

予防策をしっかりと行い、
症状があっても早く気が付く事ができれば、
苦痛も少なく、安楽に生活を援助する事が出来ます。

しかし、薬との関係で、水分量を決められてしまったり、
逆に「もっと水を飲んで」と毎日せかされたり、
精神的にも苦痛が生じている事があります。

高齢者の気持ちを理解しようとするだけでも、
お互いに通じあえ、安心感を得られると思います。

 

 

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